Office 開発におけるパフォーマンス トラブルシュート (その 2 : ボトルネックの特定)

こんにちは、Office 開発サポート チームの中村です。 前回の投稿で、Office 開発のパフォーマンスに関する調査の進め方をご紹介しました。その中で予告した通り、今回の記事ではボトルネックとなるコードの特定手法について、特定作業に使えるサンプル コードとともに詳しく解説していきます。 今回も、「Office バージョンアップに伴い、これまで利用していたプログラムのパフォーマンスが低下した」という場合を例に説明します。コードの掲載などのため記事が長くなりますがご容赦ください。   目次 1. 説明用サンプル プログラムの紹介 2. デバッグ ログの追加 (関数単位) 3. デバッグ ログの解析 4. デバッグ ログの追加 (行単位) 5. 関数単位の時刻ログ出力処理追加プログラム   1. 説明用サンプル プログラムの紹介 かなりシンプルな例ですが、以下の VBA マクロ (TestProgram.xlsm) を例に説明します。(この VBA マクロの内容で大きくパフォーマンスが低下するわけではありません。あくまでも調査の流れを説明するためのサンプルです。そして説明用にあえて効率の悪い処理などを書いています。) 前回の記事でも述べた通り、業務で使用するプログラムは膨大なステップ数となり、多くの場合は処理の内容ごとに関数を分け、これを呼び出すよう実装されています。今回のサンプルでは、OpenWorkBook / SetValue / ChangeFontColor / CloseWorkBook の 4 つの関数を呼び出しています。   <テスト プログラム 処理概要> ボタン コントロールをクリックすると、データ ブック (sample.xlsx)…


Office 開発におけるパフォーマンス トラブルシュート (その 1 : 概要と対処方法)

こんにちは、Office 開発サポート チームの中村です。 2018/7/12 Update ボトルネック特定手法についてのパート 2 記事を公開しました。   Office 開発において、「期待するパフォーマンスが出ない」「利用する Office のバージョンによってパフォーマンスが低下する」といったお問い合わせを頂くことがあります。今回の記事では、このような状況で改善を図るためにどのように調査・検討を進めればよいかを記載します。 今回は全体の流れと Office におけるパフォーマンスの考え方などを紹介しています。ボトルネックの特定手法については、以下のパート 2 の記事をご参照ください。 タイトル : Office 開発におけるパフォーマンス トラブルシュート (その 2 : ボトルネックの特定) アドレス : https://blogs.msdn.microsoft.com/office_client_development_support_blog/2018/07/12/office-perf-troubleshoot-part2/   目次 1. はじめに : Office におけるパフォーマンス 2. プログラム上のボトルネックの特定 3. 対処方法の検討 3-1. ボトルネックとなる処理の速度改善 3-2. プログラム構成の見直し 3-3. プログラム全体のパフォーマンス チューニング 3-4. 他の言語から VBA に変更する 3-5. マシン リソースの増強…


Word 2016 からメールを送信すると文字化けする

こんにちは、Office 開発サポート チームの中村です。 今回の記事では、Word 2016 からテキスト形式のメールを送信するときの以下の動作について記載します。1. は Word 2016 での意図した仕様変更による動作です。2. は、Word 2016 製品の不具合によって生じます。 メール タイトルや本文などが UTF-8 で送信される 差し込み印刷でタイトルは ANSI(SJIS) / 本文は UTF-8 で送信される Word 2016 からのテキスト形式のメールの送信では、Simple MAPIを使用しています。以下に記載する動作変更への対応として、Simple MAPI API が拡張され、従来 ANSI 用であった関数で UTF-8 が送信可能となっています。後述の通り、お手数をおかけしますが、メール アプリケーションを作成されている開発者様には、Simple MAPI の UTF-8 対応をお願いいたします。   1. Word 2016 でのテキストメールの UTF-8 への変更 Word 2013 まで、差し込み印刷や共有などの機能で Word からテキスト形式のメールを送信すると、タイトル、本文、添付ファイル名などの文字情報は、ANSI (SJIS) で送信されていました。しかしながら、グローバルで様々な言語を扱う上で ANSI では表現できない文字が多く、これらの文字への対応要望を多くいただいていました。…


Microsoft ストア アプリ版 Office 2016 (Centennial) での開発 – その1 – (DLL の読み込み)

こんにちは、Office 開発サポート チームの中村です。久しぶりの投稿になります。 このタイトルの記事では、新しい提供方法である「Microsoft ストア版 Office 2016」における、これまでの Office との違いについて、Office 開発観点から記載していきたいと思います。今後もこのテーマでは何度か投稿することになると思いますが、今回はまず、DLL 読み込み動作の違いについて記載します。   1. Microsoft ストア版 Office 2016 とは? Office 開発観点の話の前に、そもそも、Microsoft ストア版 Office 2016 とはどういうものかを簡単に説明します。 Office 2016 には色々なライセンス契約方式がありますが、これは単に契約上のみの違いではなく、販売方法によって、Office アプリケーション自体も異なる仕組みで提供されています。現在、以下の 3 種類の提供形式があります。   1-1. クイック実行 (C2R) 形式 Office 365、市販パッケージ (FPP)、以前のプレインストール (PIPC) がこの提供形式です。また、MSDN サブスクリプション契約でダウンロードできる検証用の Office 2016 も (プロダクト キーの入力などの認証方式はボリュームライセンスに一見見えますが) クイック実行形式です。 インターネットなどからサイズの小さいインストーラをダウンロードして実行し、インストールの中で実行モジュールのダウンロード等を行います。最低限の準備ができると Office を使い始めることができ、バックグラウンドで残りのインスト―ルが行われることから、クイック実行と呼ばれます。 Office 2016 では、現在このクイック実行形式が主流となっており、製品の修正、新機能の追加などは、基本的にこのクイック実行形式に対して行われます。 クイック実行形式は、Microsoft Application…


Excel / PowerPoint / Visio 2016 バージョン 1801 以降で WebBrowser コントロールがユーザーフォーム外に表示される

こんにちは、Office 開発サポート チームの中村です。 今回の記事では、ユーザーフォーム上に WebBrowser コントロールを貼り付けて利用している場合に、Windows 10 バージョン 1703 以降の OS で Office 2016 をバージョン 1801 以降に更新すると、WebBrowser コントロールがユーザーフォームの外に表示される動作について記載します。 2018/2/5 Update 本現象が発生する要因となる機能 (後述の「ディスプレイで最適な解像度を使用」) の有効化を延期しました。このため、本記事の内容は今後の更新で発生する可能性がある現象としてご案内します。現時点で、本機能の有効化時期は未定です。 2018/6/8 Update 月次チャネル バージョン 1805 (16.0.9226.2114) で本機能が有効化されました。当初公開時とオプション メニュー名などが変更されたため、記事内の画面キャプチャなどを最新の状態に更新しています。   再現手順 1. 新規 Excel ブックを作成し、Visual Basic Editor でユーザーフォーム (UserForm1) を追加して、WebBrowser コントロールとボタン コントロールを貼り付けます。   2. ボタン コントロールのクリック イベント ハンドラに以下のようなコードを記述します。 Private Sub CommandButton1_Click() UserForm1.WebBrowser1.Navigate2 (“http://www.microsoft.com”)…


Excel 2016 バージョン 1712 で Workbook_Open から表示したユーザーフォームを閉じるとクラッシュする

こんにちは、Office 開発サポート チームの中村です。 2017 年 12 月に先行リリース チャネルに公開済みの Office 2016 の更新バージョン 1712 を適用した環境の Excel 2016 で、ブック オープンと同時にユーザーフォームを表示している場合に、これを閉じると Excel がクラッシュする現象を確認しています。本記事では、現象が発生する状況と、修正、回避策についてご案内します。今後、修正状況など随時更新を予定しています。 2018/1/17 Update Insider スローへ修正を公開しました。 2018/1/23 Update Insider スローで問題が再発生する状況について追記しました。 2018/1/26 Update Insider スローに再度修正されたバージョンを公開しました。 2018/2/5 Update Insider ファーストに修正されたバージョンを公開しました。   1. 現象の詳細 Office 2016 バージョン 1712 (8827.2082 以降) の環境で、Workbook_Open イベント ハンドラなどのブック オープンと同時に実行される処理からユーザーフォームをモーダル表示するマクロが組み込まれているファイルを開くときに、ユーザーフォームは正常に表示されますが、ユーザーフォームを閉じると Excel がクラッシュします。   再現手順 1. 新規 Excel ファイルを作成します。 2. Visual Basic…


Office リボンをカスタマイズ – パート7 – (TIPS 3 : 特殊メニューのカスタマイズ)

こんにちは、Office 開発サポートの中村です。 これまで 6 回にわたってリボン カスタマイズについて記事を公開してきましたが、今回でいったん最後の記事の予定です。最後に、特殊なメニューである BackStage ビュー / 右クリックで表示されるコンテキスト メニュー / クイック アクセス ツール バーのカスタマイズ方法をご紹介します。   目次 1. BackStage ビューのカスタマイズ 2. 右クリック メニューのカスタマイズ 3. クイック アクセス ツールバーのカスタマイズ     1. BackStage ビューのカスタマイズ BackStage ビューは、Office 2010 から導入された [ファイル] タブ内のメニューを指します。Excel 2016 の場合、以下のような画面です。 Office 2010 の名前空間 <http://schemas.microsoft.com/office/2009/07/customui> では、この BackStage ビューをカスタマイズする方法も用意されています。言い換えますと、XML でのカスタマイズのみとなりますので、VSTO でビジュアルなデザイナーから BackStage ビューをカスタマイズすることはできません。 また、通常のリボンは、VBA の Comanndbars…


Excel ユーザー定義関数に機能説明や独自ヘルプをリンクする方法

こんにちは、Office 開発サポート チームの中村です。   Excel には、セルに設定する式として、SUM() のように計算に関するものや、IF() のように論理条件を制御するものなど、様々なワークシート関数が用意されています。既存のワークシート関数で要望を満たすものがない場合、マクロで実装した独自処理を、ユーザー定義関数として登録することができます。 このブログを訪れる方の多くは、ユーザー定義関数を登録すること自体はご存知の方が多いかと思いますが、このようなユーザー定義関数を作成するときにその関数に機能説明やヘルプを追加する方法について、公開情報からは分かりづらい点もありますので、本記事で紹介したいと思います。   1. ユーザー定義関数の作成 関数説明の登録やヘルプのリンクの前に、まずはユーザー定義関数を登録する方法を確認します。 ユーザー定義関数の作成は、VBA の標準モジュールに Function 関数を記述するだけですぐに利用できます。以下の例は、TestUDF という名前の関数を作成し、引数 1 に数値、引数 2 に文字列を渡すと、これらを組み合わせて文章を作成して返却する関数です。(Public でなくともユーザー定義関数として利用できます。アドインなどで複数ブックからの利用を想定している場合は Public を付与します。) Public Function TestUDF(num As Integer, str As String) As String TestUDF = “No.” & num & “は” & str & “です” End Function   このような VBA コードを追加した状態でシート上でセルに直接関数を入力すると、すぐに利用できます。   ただこのままの状態では、Excel に標準で用意されているワークシート関数で表示される利用方法の説明やヘルプ…


Office リボンをカスタマイズ – パート6 – (TIPS 2 : 動的なカスタマイズ)

こんにちは、Office 開発サポート チームの中村です。 今回の記事では、前回の投稿に引き続き、リボン カスタマイズ方法の例をご紹介します。   以前の投稿で紹介した方法で、リボンのカスタマイズがファイル単位でできることはお伝えしましたが、以下のような状況の開発者の方もいるのではないでしょうか。 ・アドインとして提供する 1 つのプログラムから、ファイルによってリボンの内容を変えたい (ファイルにカスタマイズを組み込みたくない) ・Office 97-2003 形式 (.xls 等) のファイルにリボン カスタマイズを行いたい ・ブック内での操作に応じて動的にリボンの状態を変えたい   これらの要望は、Office 2007 形式のアドイン (.xlam 等)、または VSTO カスタマイズで実現できますので、以下に具体例を用いて紹介します。Excel のカスタマイズを行われることが多いので、(これまでの記事を含め) 以下はすべて Excel を例に説明していますが、他の Office アプリケーションでも利用できます。   目次 1. .xls 形式のファイルのリボン カスタマイズを行う (アドインからファイルごとにリボンをカスタマイズする) 2. 任意のタイミングでリボンの状態を変更する   1. .xls 形式のファイルのリボン カスタマイズを行う (アドインからファイルごとにリボンをカスタマイズする) .xlsx / .xlsm 形式のファイルであれば、リボン カスタマイズの XML をファイル内に組み込むことができました。一方、.xls…


Office リボンをカスタマイズ – パート5 – (TIPS 1 : 既存メニューのカスタマイズ)

こんにちは、Office 開発サポート チームの中村です。   本テーマについて、前回の投稿から時間が空いてしまい申し訳ありません。 ここまでの記事では、カスタムのリボン タブを作成するというカスタマイズ内容を例に、カスタマイズ手法についてご紹介してきました。今回の記事からは、この他によく行われるカスタマイズの実装方法をいくつか紹介しつつ、XML などの書き方のイメージを掴んでいただればと思います。   今回の投稿で紹介する方法は、1. を除いて VSTO のビジュアルなデザイナーではカスタマイズできない内容となりますので、XML を利用して実装します。VSTO のビジュアルなデザイナーでカスタマイズしている方で以下の方法を利用したい場合は、以前の投稿の例でも行っていたように、ビジュアルなデザイナーで作成したリボンを XML へエクスポートできます。   目次 はじめに : 開発時に便利な機能 1. 既存のタブをすべて表示しない方法 2. 既存のリボン メニューを無効化する方法   はじめに : 開発時に便利な機能 Office で以下のオプションを有効にすると、リボン カスタマイズ用の XML の記述エラーをハンドリングすることができます。 無視して問題ないエラーも通知されるため、運用上はお勧めしませんが、開発時にはこのオプションを有効にしておくと実装上の問題点を確認しやすくなります。 <該当の設定項目> [ファイル] タブ – [オプション] – [詳細設定] – [全般] セクション – [アドイン ユーザー インターフェイスに関するエラーを表示する]   1. 既存のタブをすべて表示しない方法 アプリケーション経由で…