[アーカイブ] 意外と知らない Windows OS 標準の「ステップ記録ツール」

<オリジナル投稿 2012年11月20日 本ポストの情報はオリジナル投稿時点のものです。マイクロソフトの正式な見解や製品の仕様を保証するものではないことをご了承ください。>

意外と知られていない便利ツールをご紹介するシリーズ(?)。Windows 7、Windows 8 には、アプリケーションの操作のステップを記録してくれる便利なツールが付属しています。その名も、「ステップ記録ツール」 (Windows 7 では、問題ステップ記録ツールでしたっけ) です。スタートメニューなどに表示されていないので、知らない人も多いツールです。
このツールは、操作を記録し、まとめてくれますので、例えば、アプリケーションのユーザーさんから不具合の再現方法などをいただく際に重宝します。テストツールではないですよ。便利なテストツールについて気になる方は、この投稿の最後まで読んでくださいね。
ここでは、起動方法からご紹介しましょう。

起動

Windows 7, 8 の検索にて、「記録」と入力してみてください。「ステップ記録ツール」が検索結果に表示されます。

使用方法

使用方法は、下の画面ショットを見れば一目瞭然です。なにせ、選べるのは一か所だけですからw
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「記録の開始」をクリックすると以降の操作を記録してくれます。
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記録中です。マウスのクリック、タップも記録されているのが視覚的にもわかります(赤いポッチが表示されますので)
操作中に任意のコメントを画面ショット付きで残すこともできます。便利ですね。
一通りの操作を終えたら、「記録の停止」で終了します。中断したい場合は、「記録の一時停止」ですね。直感的にもいやでもわかります。

結果の出力と確認

「記録の停止」を押すと結果が表示されます。
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どこの領域をクリックしたのかなど画面ショット付きでレポートされています。
下記には、レポートされる詳細情報が記載されているため、レポート内容を確認できます。したがって共有してはいけない情報などの確認もできることになります。
操作記録は、メールで送信することもできますし、「保存」すると Zip でアーカイブされたファイルを出力してくれます。中身は、Web アーカイブ単一ファイル .mht となりますので、Internet Explorer で閲覧することができます。
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この記録ツールを応用したフィードバックの仕組み

さて、この「ステップ記録ツール」をうまく使った具体例が実はあります。それは、Visual Studio 2012 のフィードバックを受け付ける「Visual Studio フィードバックツール」です。このブログでも Visual Studio 2012 のフィードバックへのご協力のお願い として取り上げました (← Visual Studio についてのフィードバックいただける方はぜひこちらでお願いいたします)。

こちらの [記録 (R)] ボタンを押下すると、実は今回紹介したツールが起動しているのですよ。ツールを閉じると「ステップの再現」として、Zip アーカイブが自動的に添付されます。

あくまで記録ツール

ご覧いただいたように、Windows 7, 8 に搭載されている機能ですので、ユーザーから特定の問題の情報を収集させていただく際には便利ですね。このツールは、あくまでステップ記録ツールであることにご注意ください。このブログをご覧の方の67%の方は、きっとこれを「テストツール(テストエビデンス)として使えるのではないか?」、「エンドユーザーからのフィードバックの包括的な仕組みに使えるのではないか?」と考えることでしょう。

開発者、エンドユーザーよ、テストツールとはこういうものを言うのだ!

それらは、マイクロソフトでは、Test Manager、Feedback Client で提供しています。これらのほうが、情報収集量も、精度も、情報共有能力も、その目的にマッチしています。
ここでは、あまり詳細については触れません、だいたい以下だと思ってください。
Test Manager テストのプロセスと成果物を包括的に運営できるテスト専用ツールです。テスト計画、テスト実行、結果の収集、バグの起票、これらの追跡が一つのインターフェイスで行えます。その中の手動テストでは、今回紹介したような手順の記録、画面ショットの収集、操作自体のビデオキャプチャ、一度実行した操作の2度目以降の自動実施などテスト実施に多くのメリットを提供してくれます。また、Test Manager のバックエンドは Team Foundation Server (TFS) です。 TFS では、要件からタスク、ソースコードの変更セット、自動ビルド~という開発ライフサイクルの一連の成果物を1つのリポジトリで追跡可能性を自然と確保します。この流れで、要件と関連するテストスイート、テストケース、テスト対象ビルドを Test Manager で容易に把握、関連付けを行えます。当然テスト結果には、テスト対象ビルド、テスト対象要件、上述の高度なテストエビデンスが常に関連付けられます。バグを起票すれば、バグにもどのビルドでバグが発見されたのか、バグ改修後にはどのビルドでバグが修正されたのかが自動で記録されます。テストエビデンスの収取し四苦八苦することもなく、それ以上にテストとして必要な事柄をテスターにも開発者にもマネージャーにも負担をかけずに行える仕組みを提供しています。

テストの計画では、テスト環境、テスト構成、テスト対象ビルドを包括的に設定できます。これは TFS で情報集約できているからこそのメリットです。同じく、テスト結果も、すぐにレポートとして見ることができます。

要件、自動ビルド、テストケースが有機的に連携できているため、テスト対象ビルドを変えると、どのタスクやバグ改修が終えているのか、どのテストケースから順にテストしていけばいいのかも一望できます。

手動テストも容易です。一度やった操作は2回目以降自動化が可能なため、問題個所の確認に専念できます。自動化したテストケースは、開発者が行う UI テストとして使える C# などのコードに変換することができます。要するにテスト作業を無駄なく開発での単体テストとして、そして継続的インテグレーションでの検証として利用できます。

バグ起票もクリック一発です。テスト実施ステップごとのOK/NGやビデオキャプチャ/システム情報/テスト対象ビルドIDなどもも自動で起票されます。タイトル入れれば起票OKです。もちろん、これらのバグ票は、開発者は、EclipseやVisual Studioから見ることができますし、そのまま作業を行い、コードをコミットするとバグとコードの変更セットが関連付けられ、自動ビルドが走り・・・と完全なトレーサビリティが確保できるわけです(この辺たくさん書きたいですが、本題からそれているので他の投稿にて)。
探索的テストもできます。実施したテストのバグ起票は上記と同様ですし、再現ステップを編集し、開発者にわかりやすい再現手順にしたり、次回以降の手動テストを楽にすることができます。そのまま、この探索的テストをテストケースとして登録することもできます。便利な世の中ですね。

この Test Manager が使えるエディションは、

    • Visual Studio 2010
      • Visual Studio 2010 Test Professional with MSDN
      • Visual Studio 2010 Ultimate with MSDN
    • Visual Studio 2012
      • Visual Studio Test Professional with MSDN
      • Visual Studio Premium with MSDN
      • Visual Studio Ultimate with MSDN

です。Visual Studio 2012 から Premium エディションでも利用することができるようになっていますので、権利をお持ちの方は、積極的な活用をお勧めします。
Test Manager を使った Windows ストア アプリ の実機リモートでの手動テスト/探索的テストについても過去に書きましたので、このあたりに関心のある方はご覧ください。
Windows 8 の手動テストをリモートの実機で行う方法
Feedback Client エンドユーザーさんからいち早くアプリのフィードバックをいただくための仕組み。ユーザビリティラボを実現してくれるツールです。このツールもバックエンドは、TFS です。フィードバックの要求は、TFS の Web インターフェイスからメール送信することができます。エンドユーザーさんは、このツール自体も無料でダウンロードできます。使ってもらいたいアプリの入手先もメールに含めることができます。メール内容をクリックしていくだけでアプリを早期に試してフィードバックをすることができるわけです。フィードバックでは、操作のビデオキャプチャ、音声の収録もエンドユーザー側で選択できますので、リッチテキストにフィードバックをいちいち手入力しなくても、開発者に自分の想いを伝えることができます。「アプリにアクセスする」→「操作しフィードバックを記録する」→「評価結果を選択し、送信する」のたった3ステップで開発チームに直接フィードバックを投げることができます(もちろん、メールが来なくても自発的にフィードバックを送信することもできます)。

3ステップでフィードバックをおくれて開発チームメンバーは、Web からでも Eclipse や Visual Studio からでも即閲覧可能。

このツールは、Visual Studio 2012 からの提供となります。この Feedback Client が使えるエディションは、

    • Visual Studio Test Professional 2012 with MSDN
    • Visual Studio Premium 2012 with MSDN
    • Visual Studio Ultimate 2012 with MSDN

です。
簡易的な情報収集では、「ステップ記録ツール」が便利ですね。プロとしてユーザーに価値を提供し続ける開発を実践するには、プロの道具を用意しましょう。