ケータイWatch のWP7の開発環境に関する記事について
先日 ケータイWatch で掲載された越川さんのインタビュー記事の中で、ちょっと誤解を招きそうな記事内容になっていました。
マイクロソフト越川氏に聞く Windows Phoneの「7」と「6」、MSの目指すモバイルの世界
そんなわけで、個人的に知っている範囲で補足です。尚記事自体は越川さんがインタビューを受けてその内容を記者の方が書かれたもののようです。(ま、普通そうですが)
記事内容 一問一答?
■開発環境
開発環境というよりも、開発やアプリケーションプラットフォーム全般の話です。
――Windows Mobile 6で.NETフレームワークを動かしたりということは可能ですか?
.NET の開発も可能ですし、
いわゆる .NET Compact Framework という意味です。広義の意味で .NET と記者の方は書かれていますが、.NET (Full) Framework という意味ではないです。
Silverlightもネイティブでは非対応ですが、Silverlightビューワーのようなものを開発いただくことで動作するはずです。
あくまで理論上ですね。ただ、実際 Silverlight ビューワー的なものを Microsoft 以外で作るのはちょっと難しいでしょうしあまりメリットもありそうにないです。
また、Windows Mobile 6.5向けに開発したアプリについても、ポーティング先をWindows Phone 7にすれば、ハードウェア上は動く仕様となっています。
あくまで、6.5用に作られたものを、Tool を変えて(コードも修正して)7向けに作りなおす可能性はあるでしょうから全く0からの開発ではないです、くらいのとらえ方ですね。もちろん0から作ったほうが楽なものもたくさんあります。
ここの「ハードウェア上は動く仕様」はちょっと文脈上意味不明です。
Windows Phone 7ではハードウェアスペックが上がるので、数行のコードの追記は必要ではあるものの、Windows Mobile 6.5向けのアプリはほぼ動くと思います。開発者は、Windows Phone 7とWindows Mobile 6の両方をやられる方が多いはずです。開発したアプリのポーティング先を6.5でも7でもはき出しやすい形に記述されるのかもしれません。
前述と同義ですが、6.5向けのアプリケーションの開発の中であくまでも移行できるのは、.NET でのアプリケーション開発についての知識と、モバイルアプリケーションに対するアイディア、そして一部の環境依存しない.NETのソースコード。(アルゴリズム系などはそうですね)
WP7については Silverlight / XNA のアプリケーションのみとしておりますし、開発環境は WM6.xはVS2005/2008、そして WP7 は VS2010 となっていますので、環境も全く異なります。プロジェクトタイプも全く異なりますので、一部のソースをコピペして移植するくらいになるでしょう。
補足
なにか、同じツールで、ちょっとコードを付け替えてWM6.5/WP7 用にアプリをコンパイルできるようなニュアンスに取られてしまいそうな文章ですが、少なくともそういった環境はないです。VS2010ではWM6のアプリは作れませんし、VS2008/2005 には WP7 のアプリは作れません。
ただ、たとえばソートアルゴリズムや、暗号化のためのクラスなど、アルゴリズム的要素が多いものであれば .NET の互換性の観点で見て移植しやすいものが多々あるでしょう。また、UIは逆にほぼ移植するべきではなく、Silverlight の特性を生かして自由なUI設計ができるようになります。
あくまで、 「これまでの.NETでの開発知識」や、「モバイルアプリケーションに対するアイディア」をそのまま 「Windows Phone 7 のアプリケーション開発に生かして」ください! と、いうのが越川さんのメッセージのようですね。
まとめると
- 事実上MSがSivlerlight ビューワーでも作らないと 6.5でSilverlight はたぶんない(高橋勝手論)
- WM6.5 と WP7のアプリケーション環境は異なる(基本的に互換性なし)
- ツールについては WM6はVS2005/2008でWP7はVS2010.
- .NETレベルでの一部のAPIに互換性あり、利用というよりも移植
- 移行できるのは一部の開発コードと、アプリケーションに関するアイディア
- 開発者は、Windows Phone 7とWindows Mobile 6の両方をやられる方が多いはず
ちなみに….
実際インタビューや記事などで編集側で内容が変わることはよくあります。きちんと文章を修正している部分は大変助かりますが、時々断片的な言葉だけを取られてあとは文章を付けらえていることもあります。
「『ここが重要』と高橋氏は語る」なんて記事をよんで、そうは言ったけど 「重要とは言ったけど、そこじゃないから!」 なんてことはよくあります。最終原稿いただけないこともありますからね。
逆に私のひどい文章をきれいに修正してまとめ挙げていただいたことも多々あって、やっぱりプロはすごいなーと、感嘆の声を上げながらちょっと恥ずかしい思いをしたこともw