Part 7. Windows OS の変更ログの入手方法


ここまでアプリ・インフラ両側面から Windows 10 WaaS 環境への移行についての注意点などを解説してきましたが、最終的にはインフラ/アプリどちらの観点であっても、FU/SU での変更点を把握して検討することが重要になります。

  • インフラ観点 : FU で提供される新機能をどのように取り込むか?
  • アプリ観点 : FU/SU で行われた変更でどのようなデグレードが発生しそうか?

この Windows OS の変更ログは様々なチャネルを介して提供されており、自分の目的に合ったものを探して利用する必要があります。

[FU/SU 配信の流れと IP/CB/CBB の関係の再整理]

まず復習として、FU/SU の配信タイミングと、IP/CB/CBB の関係を整理すると、以下のようになります。

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  • 用語の整理
    • IP : Insider Preview (アーリアダプタ向けに公開される中間ビルド)
    • CB : Current Branch (コンシューマ向けのリリース)
    • CBB : Current Branch for Business (ビジネスユーザ向けのリリース)
    • FU : Feature Upgrade (いわゆる従来のサービスパックに相当)
    • SU : Servicing Update  (いわゆる従来の累積セキュリティパッチに相当)(※ 今後は QU : Quality Update に名称変更の予定)
  • 基本的な流れは、以下のように整理することができます。
    • ① IP リリースごとに、機能追加・変更と、修正(脆弱性・バグ)が行われる
    • ② ①がある程度貯まると、CB として FU がリリースされる
    • ③ FU リリース後は、サポート終了まで修正(脆弱性・バグ)が SU として配信される

この一連の流れにおいて、我々は以下を整理しておく必要があります。

  • 公式/非公式サイトから、どのタイミングでどのような情報が提供されているのか?
  • 自社での検討のために、どのタイミングでどのような情報が欲しいのか?

重要なので Part 5-b で解説したことを繰り返しますが、変更情報には、「機能追加・変更」に関する情報と、「修正」に関する情報があり、どのレベルで非互換情報を確認するのかを意識することが非常に大切です。

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簡単に言えば、以下のようになります。

  • ミッションクリティカルが高い場合には…
    • 機能追加・変更だけでなく、修正情報(パッチ情報)についても確認することになるが…
    • この場合、パッチリリースごとの確認が必要 → 自動化されたテストの繰り返しが必要です。
  • ミッションクリティカル度が中程度の場合には..
    • この場合には、機能追加・変更を中心に確認することになります。
    • よって、FU のリリースのつど(=CB がリリースされるつど)、機能追加・変更を確認することになります。

ではおさらいはこの程度にして、実際にどのような場所から機能追加・変更・修正に関する情報を入手できるのかを整理します。

[代表的な変更ログ情報の提供サイトについて]

公式/非公式含め、代表的な変更ログ情報サイトには以下のようなものがあります。

サイト名 スコープ 提供頻度 情報粒度 公式/非公式 言語 注意事項
Windows 10 ロードマップ OS 全体 FU 概要レベル 公式 日本語あり 全体像を掴むのに便利
Windows Insider blog OS 全体 IP 機能追加・変更・修正 公式 英語のみ 情報が細かいため整理が必要
Microsoft Edge Changelog Edge のみ IP/FU 機能追加・変更・修正 公式 英語のみ Edge に特化
What’s new in Windows for developers 主に UWP FU 機能追加・変更 公式 英語のみ ほぼ UWP に特化
Windows blog for Japan OS 全体 主に FU 機能追加・変更 公式 日本語のみ 重要なトピックに絞って解説
ChangeWindows.org OS 全体 IP/FU 機能追加・変更 非公式 英語のみ 非公式だが極めて便利
ASKVG OS 全体 IP/FU 機能追加・変更 非公式 英語のみ  
Windows 10 リリース情報 OS 全体 SU 修正 公式 日本語あり いわゆる KB 情報
Windows and Windows Server compatibility cookbook OS 全体 機能追加・変更 公式 英語のみ Windows 7~8.1 までの情報

多分に私見が入りまくりますが;、それぞれのサイトを紹介すると、以下のようになります。

Windows 10 ロードマップ

  • https://www.microsoft.com/ja-jp/WindowsForBusiness/windows-roadmap
  • よいところ
    • 概要レベルで、機能追加・変更の全体像を掴むことができる
    • ユーザの用途(大企業向け/中小企業向けなど)によって情報が整理されている
    • 今後のロードマップも(ある程度)知ることができる
  • 残念なところ
    • 細かい内容はほとんどわからないため、他の資料を確認する必要がある
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Windows Insider blog

  • https://blogs.windows.com/windowsexperience/tag/windows-10-insider-preview/
  • よいところ
    • マイクロソフトから公式情報として公開されている、機能追加・変更・修正情報
    • 機能追加・変更をほぼ網羅しており、修正情報は代表的なものが取り上げられている
  • 残念なところ
    • プレビュービルド毎に情報公開しているが、機能アップグレード毎に整理されていない
    • このため、アプリ互換性検証で利用しようとすると、FU 間でのすべての IP の情報を自力でまとめ上げなければならない
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Microsoft Edge Changelog

  • https://developer.microsoft.com/en-us/microsoft-edge/platform/changelog/
  • よいところ
    • Edge 開発チームから公式情報として公開されている機能追加・変更・修正情報
    • 機能追加・変更を網羅しており、修正情報は代表的なものが取り上げられている
    • Web 上で、任意のプレビュービルド間や CB 間での差分情報をまとめて表示することが可能(← この機能がよくできています)
  • 残念なところ
    • (当たり前ですが)ブラウザ関連の情報しかないこと
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What’s new in Windows for developers

  • https://msdn.microsoft.com/en-us/windows/uwp/whats-new/windows-10-version-1607
  • よいところ
    • マイクロソフトから公開されている開発者向けの機能追加・変更の情報
    • 主に UWP 開発における FU 間でのアプリ開発者向けの機能追加・変更点が整理されている
  • 残念なところ
    • UWP 関連(アプリ開発ランタイム)の情報しか含まれていないこと
    • OS 側の変更点についてはほとんど含まれていないこと
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Windows blog for Japan

  • https://blogs.windows.com/japan/
  • よいところ
    • 日本固有の情報について提供している公式の Web サイト
    • 日本語で重要な情報が提供される
  • 残念なところ
    • 重要な変更情報の提供にとどまっており、OS の変更情報が網羅されているわけではないこと
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ChangeWindows.org

  • http://changewindows.org/
  • よいところ
    • 公式サイトなどの情報を元に作られた、非公式の機能追加・変更情報サイト
    • Insider Preview 単位の情報提供に加え、機能アップグレードごとに集約情報を提供
    • PC, Mobile, Xbox, Server, IoT すべての情報をわかりやすく一覧化して情報提供
  • 残念なところ
    • 公式サイトではないこと(というかこれが非公式サイトというのが未だ信じられないのですが;;)

ASKVG

  • http://www.askvg.com/category/windows-10/
  • よいところ
    • 公式サイトなどの情報を元に作られた、非公式の機能追加・変更情報サイト
    • Insider Preview 単位の情報提供に加え、機能アップグレードごとに集約情報を提供
  • 残念なところ
    • ChangeWindows.org に比べて説明は細かいが、一覧性には劣る

Windows 10 リリース情報

  • https://technet.microsoft.com/en-us/windows/release-info.aspx
  • よいところ
    • サービスアップデート(累積パッチ)の内容を解説した内容
    • CB リリース後の脆弱性・信頼性・バグ修正に関する情報を提供するもの
    • 日本語での情報提供もある
  • 残念なところ
    • サービスアップデートの情報しかない=機能アップグレードの情報がない
    • このため、実態としては使いどころがほとんどない
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また、Windows 10 WaaS とは少し異なるのですが、こちらの情報についても紹介しておきます。

Windows and Windows Server compatibility cookbook

  • https://msdn.microsoft.com/en-us/library/windows/desktop/hh848074.aspx
    (日本語版はこちら、ただし Windows 10 部分のみ) 
  • よいところ
    • Windows 7→8, 8→8.1 における主な機能追加・変更に関する情報が取りまとめられている
    • 非互換項目についてはワークアラウンド(回避策)が掲載されているものもある
    • 下図にあるように、実際の Windows 10 への移行においては、① 初回の Windows 10 への移行と、② 移行した後の WaaS による継続的な更新とがある。②に関してはここまでに取り上げてきた情報が役立つが、①の部分に関してはこの Cookbook の情報が役立つ。
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    • ただし、7/8/8.1 からの移行の場合、UI コントロールの見た目の変更に伴い、比較的大規模なアプリ互換性検証を行う場合が多いと考えられるため、この情報を使う必要があるかどうかに関してはケースバイケース
  • 残念なところ
    • 機能追加・変更がきちんとまとまっているのは 8.1 までで、10 以降に関しては情報がほとんどない
    • 英語の情報しかない

[Premier WaaS 非互換情報提供サービスについて]

ここまで代表的な情報提供サイトをご紹介してきたのですが、中程度のミッションクリティカル度を持つアプリ互換性検証を想定した場合、実際にほしいのは以下のような情報です。

  • FU ごとに、機能追加・変更に関する情報が一覧として整理されている情報がベンダーから欲しい。
  • 突合せ確認が簡単にできるように、表形式などでわかりやすく一覧化されていると使いやすい。できれば日本語で。

この要件を考えた場合、上記の書いたサイトはどれも一長一短で、どうしてもある程度自分でのとりまとめが必要になります。

  • Windows 10 ロードマップ情報 : アプリ互換性検証の目的で使うには情報が粗すぎる。
  • Windows Insider blog : 情報としてはよいが、Insider Preview 単位に情報が細かく分割されてしまっているため、整理する手間がかかる。
  • Edge Changelog : 情報をまとめて一括表示できるのは便利だが、ブラウザの情報しかない。
  • What’s new in Windows for developers : FU 間の差分情報が一覧で整理されているのは便利だが、UWP 系ランタイムの情報しかない。
  • Windows blog for Japan : 情報の網羅性がない。
  • ChangeWindows.org : 内容・まとめ方ともにほぼベストだが、英語かつ非公式。
  • ASKVG : 一覧形式にまとまっていないため、見るのが大変。
  • Windows 10 リリース情報 : そもそも SU の修正情報しか掲載されていない。
  • Windows and Windows Server compatibility cookbook : Windows 10 以降については情報がほとんど含まれていない。

私が一通り使ってみた感触では、ChangeWindows.org の情報が一番使い勝手がよく、次点がその情報ソースである Windows Insider blog かな、という印象があるのですが、いずれも上記に述べた課題があります。正直なところ、実用上は ChangeWindows.org + Windows blog for Japan の 2 つの情報でいけると思うのですが、大企業の方(特に IT 部門の方)だとなかなかこれでは納得できない & 各業務部門の開発現場を納得させられない、ということがあるかもしれません。

こうした事情から、私の方で Premier サポートの方々と相談し、(有償サポートではあるのですが)日本の Premier サポートサービスの提供サービスメニューの一つとして、「WaaS 非互換情報提供サービス」「Windows 7 → 10 非互換情報提供サービス」という名称で、機能追加・変更の一覧情報を FU リリースのつど提供できるように調整しました。

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以下のような項目を一覧化して取りまとめています。ざーっと機能追加・変更を眺めて、各自の業務アプリに影響しそうな項目を抽出するのに役立てることができると思います。弊社プレミアサポート契約をお持ちであれば、有償ですがそこから入手が可能ですので、どうしても非公式情報や英語の情報では……といったことがあれば、弊社プレミアサポートまでお問合せください。

  • カテゴリ
  • 変更内容
  • 変更が加えられたバージョン/ビルド番号
  • 変更種別(機能追加・変更・削除)
  • 参考 URL(情報ソースとなっているより詳しい URL)
  • 要注意事項(レガシー業務アプリに非互換問題を引き起こしやすそうな項目)
  • 備考

またここでは特に取り上げていませんが、私が所属しているコンサルティングサービスでは、(大企業様向けに特化していますが)Windows 10 導入支援や、開発近代化支援などのカスタムコンサルティングサービスを提供しています。Windows 10 WaaS 環境への移行や、システム開発を近代化して WaaS 対応はもとよりさらなる高開発生産性を目指したい、といったニーズに関しては、コンサルティングサービスにご相談ください。

[Windows OS の変更ログの利用上の注意点について]

最後に、Part 5-b. で触れたことの繰り返しになりますが、どのような非互換情報リストを利用しても、絞り込んだテストだけで非互換問題を事前に100% 洗い出すことは原理的にできない、という点についてはくれぐれも注意してください。マイクロソフトに限らず、ベンダーから提供される非互換情報そのものは、すべての変更点を網羅したリストにはそもそもなっておらず(=すべての変更点を網羅したリストを提供していない)、また同時に、「何を機能追加・変更・修正とみなすのか?」に関しては、ある程度、人間の恣意的な判断が入ることが原理的に避けられません

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ですから、以下の 2 点については必ず意識するようにしてください。

  • どのような変更ログを利用するとしても、絞り込み再テストを行う方法では原理的に見逃しリスクをゼロにすることはできない。
  • 故にリスクヘッジのためには FU/SU のリング配信と迅速な障害対応を組み合わせることが必須である。

[まとめ~エンタープライズ企業における Windows 10 導入と WaaS 適用の要点]

というわけでかなりの大ボリュームでお送りした一連の blog エントリですが、締め括りとして要点をまとめておきます。

  • エンタープライズ企業における Windows 10 の導入では、その後の WaaS 適用を見越した対応を行うことが重要である
    • Windows 10 の導入 = 継続的にアップグレードされ続ける環境への移行である。
    • このため、WaaS での継続的な機能アップグレードの仕組みを理解するとともに、過去のやり方を見直し、効率的な保守・運用ができる仕組みを整えることが重要になる。
  • 代表的な Windows 10 導入の目的
    • 1. セキュリティ強化、2. モバイルワークスタイル、3. 多彩なデバイス活用、などを検討してみる
  • WaaS の正しい理解
    • IP/CB/CBB/LTSB の使い分けが重要、特に LTSB は一般の OA 端末で利用するものではないことに注意する
    • Windows 10 の更新には、FU、SU、ストアアプリの更新がある
    • FU は 1 バージョンスキップするものではなく、順次アップグレードしていくべきものであることに注意する
  • Windows 10 導入時の検討の流れ
    • Windows 10 の導入時にやるべきことは、アプリ/インフラ、すぐに対応できること/できないことに分けて考える
  • Windows 10 導入時に考え方・やり方を変えるべきポイント – アプリ編
    • ミッションクリティカル度に応じて、互換性検証のレベルを変える
    • アプリ互換性検証の効率化の基本指針は、① テストケースの絞り込みと、② FU/SU のリング配信によるリスクヘッジ。
    • さらに効率化を進めたい場合、全体最適化が必要なこともある。その際は、中長期的な計画として、システム開発の近代化に取り組んでいく。
  • Windows 10 導入時に考え方・やり方を変えるべきポイント – インフラ編
    • 特に、セキュリティ、マスタイメージ管理、FU/SU 配信方式について検討するとよい。
  • Windows OS の変更ログの入手方法
    • いつどのような目的でどんな非互換情報(変更ログ)が必要になるのかを考え、それに合わせた情報入手方法を決定する。
    • 公式/非公式の様々な Web サイトがあるため、自分の目的にあった情報入手方法を検討しておく。

Windows 10 の導入は、新しい近代的な IT 環境への移行である、と考え、本 blog エントリを参考に、ぜひ IT 環境やシステム開発の近代化を進めていただければと思います。長文にもかかわらず、最後までお付き合いいただいてありがとうございました。


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