Part 2. 代表的な Windows 10 導入の目的


[Windows 10 導入目的の明確化の必要性]

Windows 10 を導入する目的は、おそらくお客様ごとで様々に異なるでしょう。ハードウェアサポート切れなどの消極的な理由で Windows 10 を導入する、という場合もあるでしょうし、一方で積極的に Windows 10 の最新技術を使いたい、という場合もあるかもしれません。ただ、いずれの場合であっても、Windows 10 の導入を始めるにあたって、どのようなメリットを得るのかを予め検討しておかないと、そもそも Windows 10 導入の予算が取れなかったり、Windows 10 導入時にどこを重点的に検討すべきなのかが決められません。

Windows 10 導入の代表的な目的としては、以下の 3 つが挙げられます。いずれも IT インフラ管理者の目線ではなく、「お客様目線(エンドユーザ目線)」でのメリットですが、こうした目線で訴求ポイントをまとめておくと、その後の検討や提案も進めやすくなると思います。

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以下、順番に見ていきたいと思います。

[1. セキュリティ強化]

サイバー攻撃は直近 10 年で大きく変化しています。従来は単なるいたずらを動機としていたものが、現在では利益やテロが目的となっており、その攻撃規模も従来とは比べ物にならないほど大きくなっています。

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恐ろしいことに、現在ではゼロデイ脆弱性(パッチが提供されていない脆弱性)を売買する企業が存在していたり、さらにそれを元にマルウェアを開発するためのツールキットも存在しており、超有能なクラッカーでなくてもサイバー攻撃ができる環境が整いつつあります。サイバー攻撃による ROI は 1000% 以上などとも言われており、さらには企業の約 9 割は未知の脅威が侵入済みであるといった話まで存在します。

この辺については、de:code 2016 のセキュリティ関連セッションが詳しいため詳細はそちらに譲りたいと思いますが、重要なポイントとして、最新の攻撃への一番効果的な対策は、最新の OS への乗り換えである、という点を理解しておく必要があります。

  • 典型的な誤解として、セキュリティパッチをすべて当てさえすれば大丈夫、というものがあります。もちろん、セキュリティパッチを適切に当てていくことは基本中の基本ですが、これはあくまで「現在の『穴』を塞ぐ」というものでしかなく、「根本的な安全性を高める」ことはセキュリティパッチではできない、という点を理解する必要があります。
  • 例えば Credential Guard という仮想化ベースセキュリティの仕組みは、Pass-the-Hash と呼ばれる攻撃への安全性を大きく高めますが、これは内部的に Hyper-V を使って「やり方そのもの」を変えています。パッチだけでどうにかなるものではありません。
  • 例え話ですが、車の安全性を高めるためにエアバックを取り付けよう……というときに、50 年前の車に取り付けることはまず無茶でしょう;。でも、最新の車であれば、エアバックなんて当然のように標準装備です。

一例として、米国防総省は、400 万台の PC を Windows 10 にアップグレードする、という基本方針を決めました。仔細はリンク先を見ていただけるとよいと思いますが、その際の決定のキーポイントは以下の 2 点だったそうです。

  • 最新・最高レベルのセキュリティを持つ OS の活用
  • 単一のプラットフォーム利用により、運用環境の合理化とコスト削減を同時に実現

Windows 10 やマイクロソフトの製品が安全なのかどうか? という点については人により意見が分かれるところでしょうが、ただ、米国防総省は全世界で最もサイバー攻撃を受けているといわれており(ちなみに二番手はマイクロソフトだそうです;)、そうした組織が上記のような判断をしている、というところはひとつ参考になる部分だと思います。

[2. モバイルワークスタイル]

日本の労働人口の生産性は、先進諸国の中では群を抜いて低い、という話を聞かれたことがある方も多いかと思います。実際、仕事がとにかく大変、と実感されているサラリーマンの方は非常に多いのではないかと思いますが、今のやり方を変えなければ、その延長線上にある未来はとても明るいとは言えないでしょう。今後の日本は少子高齢化により、社会保障費の増大・貯蓄率低下・投資率低下などが進むことが見えており、従来のような労働集約型産業は成立しなくなっていきます。となると、必然的に、老若男女が共に働き、高い生産性で(=短時間で)稼ぎ、さらにに多様な働き方を認めることが必要になってくるはずです……が、日本は特にホワイトカラー(知的労働者)の生産性が依然として低いのが実態です。(これに関しては、樋口さんのこちらのエントリが非常にわかりやすいです。一読の価値があるかと。)

ホワイトカラーの生産性を高める手法は様々にありますが、その一つとして注目されているのが、モバイルワークスタイルと呼ばれる考え方です。簡単に言えば、タブレット PC とモバイルルータとスマホ、そしていつでもどこでも使えるアプリを使って、いつでもどこでも仕事ができるようにすることで、1 日 24 時間をより柔軟かつ効率的に使いましょう、というワークスタイルです。

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このワークスタイルは、例えばマイクロソフトの社員はまさに日々実践しており、私自身も正直これがなければ生きていけない、と実感するほど極めて重要なものになっています。例えば私の場合、少し前に息子が生まれたのですが、

  • 朝は少し家事を手伝いつつ頭の中で情報を整理し、自宅である程度仕事をこなして作業が行き詰まったところでラッシュアワーを避けて出社。
  • 電車に乗りながらアイディアを練り込み、会社についたら資料作成を継続。
  • そして早めに自宅に帰って子供をお風呂に入れ、家族で食事を取ってから再び仕事に戻る。

なんていうワークスタイルを取っているのですが、こういうワークスタイルが取れるからこそ日常を回していける、という実態があります。

こうしたモバイルワークスタイルの話をすると必ず出てくるのが、人や制度に関わる課題、あるいは情報漏えいなどに関わるセキュリティ上のリスクなどです。これらの懸念があるのは当然ですし、それをヘッジするためにルールを設けるのは当然のことですが、必要以上にがんじがらめにして社員の生産性を損なうようでは本末転倒です。(概してルールを決める人がリスクを取りたくないが故に、がんじがらめにしすぎる傾向がありますが、この点については意思決定者の方にはホントに考えてほしいところです、いやマジで;。)

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特にセキュリティに関しては後ろのパートでも触れていきたいと思いますが、近代的なセキュリティの考え方は、「安全性と利便性の両方を取る」「ルールを増やすのではなく技術をうまく活用する」のが基本です。最も高度なセキュリティを要求される銀行でも、従業員の業務効率化やワークスタイル変革に向けた動きを始めているほどで、例えば三井住友銀行様では Windows 10 とパブリッククラウドを活用した改革へと舵を切っています(情報はこちら)。Windows 10 の導入は非常によいタイミングでもあるので、ワークスタイル変革についてもぜひ検討してみてください。

[3. 多彩なデバイス活用]

前述したモバイルワークスタイルはユビキタスコンピューティングとの両輪で実現されるもので、豊富なクラウドサービス、いつでも利用可能な高速モバイル回線、そして多彩なデバイスによって下支えされています。マイクロソフトもこうした「多彩なデバイス」の重要性を認識しており、現在ではウェアラブルから大型デバイスまでを、Windows 10 というシングル OS でサポートする、という環境を実現しています。

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こうした多彩なデバイスを、状況に応じて使い分けたり併用したりすることが、特にモバイルワークスタイルなどでは必要になってきますが、この際、マルチデバイスに対する重複開発の問題をいかに最小限に抑え込むかが重要になります。この点に関しては、UWP(Universal Windows Platform)を使えば、複数の Windows 10 デバイスに対して一つのバイナリで対応するアプリケーションの開発ができる、というポイントが大きなメリットになります。(もちろん、複数のスクリーンサイズに対応するためのレスポンシブ対応などの工夫は必要になりますが、開発技術が同じであり、ロジックなどを使いまわせるメリットは非常に大きいです。)

※(注記) 少し話が逸れますが、マルチデバイスアプリなら UWP ではなく HTML5 での開発ではないか? と考える方も稀にいますが、HTML5 ではネイティブアプリ開発技術ほどの開発生産性や操作性を実現できません。例えば UWP, Xamain, HTML5 の 3 つの技術を比較すると、これらは開発生産性やユーザビリティと、リーチ性の間でトレードオフの関係を持ちます。ここではこれ以上深掘りはしませんが、なんでも HTML5 で作ればよい、という発想は、業務アプリ開発の世界では必ずしも正しくないことに注意してください。

こうした多彩なデバイスの活用は、ビジネスのやり方をも変える力を持ち得ます。下図はデバイスの活用による業務改革の例ですが、① 社員の生産性の改善、② オペレーションコストの低減、③ お客様サービスの改善、といったシナリオでデバイス活用を考えてみると、様々なアイディアが出てくるのではないかと思います。Windows 10 の導入に併せて、モバイルワークスタイルだけでなく、こうした業務改善・改革も検討してみていただくとよいでしょう。

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ここでは、代表的な Windows 10 導入の目的を 3 つ例として挙げましたが、いずれにせよ、こうした訴求メットを明らかにしておかないと、せっかくの Windows 10 の導入も「単なる OS 入れ替え」だけに留まってしまいます。新しい OS を入れるのであれば、新しいメリットをぜひ入れられるよう検討してみてください。


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