Windows Release Preview: IE10 Platform Preview 6

Windows 8 の IE10 では、ブラウザーが刷新されています。IE10 は、Windows で Web を十分に体験するための最高の手段となるように設計され、構築されています。Windows Release Preview には更新された IE10 エンジンが搭載されており、よりタッチ操作がしやすく、より高速で滑らかな Web アプリケーションをお楽しみいただけるようになりました。この IE10 Platform Preview 6 では、パフォーマンスの向上とタッチ主導の HTML5 のサポートの強化が図られているだけでなく、互換性のある Web サイトのコンテンツを Metro スタイル Web ブラウザーで再生できるようにする、電源面で最適化された新しいタッチ操作対応 Adobe Flash Player が導入されています。さらに、IE10 はユーザーのプライバシーを保護するため、既定で "追跡拒否" (Do Not Track) 信号を Web サイトに送信します。

Windows Release Preview の一部である IE10 Platform Preview 6 で強化されたパフォーマンスとタッチ操作を紹介したビデオ
(このビデオは Channel 9 でもご覧いただけます) (英語)

Metro スタイルのブラウジング エクスペリエンスの改良点については、Building Windows 8 ブログで詳しくご覧いただけます。この記事では、基盤となる HTML5 エンジンについてお話しします。

Windows 8 では、付属する 1 つの HTML5 ブラウジング エンジンによって、ブラウジング エクスペリエンス (Metro スタイルとデスクトップ) と、HTML5 および JavaScript を使う Metro スタイル アプリの両方に対応します。共通で使用される HTML5 エンジンは、Web 標準と Web プログラミング モデルを一貫して高速、安全、かつ強力にサポートし、ブラウザー エクスペリエンスと Metro スタイル アプリの両方に提供します。

このパワーは、基盤のハードウェアを安全にフル活用した、応答性が良いタッチ操作対応ページとして体験することができます。IE Test Drive サイト (英語) には、Consumer Preview でお試しいただけるいくつかのサンプルが用意されています。たとえば、Chalkboard Benchmark では、パンやズームなどの共通タッチ操作や、写真や画像を操作するマルチタッチ対応 Web ページをテストできます。新機能の完全なリストは、IE10 開発者向けガイドでご確認いただけます。

Metro スタイルの Internet Explorer 10 におけるタッチ操作対応 Adobe Flash

Windows 8 Release Preview には、電源面で最適化されたタッチ操作対応 Adobe Flash Player が搭載されています。互換性のある Web サイトの Adobe Flash コンテンツが Metro スタイル IE10 で再生されるようになりました。Windows 8 の Flash に対応した Metro スタイル IE10 を使うと、他のタッチ主導エクスペリエンスやタブレット エクスペリエンスと比べて特に品質の高い Web 作品を表示できるようになります。

私たちは、Metro スタイル ブラウザーでより多くのサイトが "動作するようにするだけ" で、ユーザーと企業のエクスペリエンスも向上すると考えています。実際問題として、主に持ち歩くデバイスでは、よく使うサイトの Web コンテンツが再生されなければなりません。再生できないと、そのデバイスは PC のおまけにすぎなくなります。一部の人気 Web サイトでは Adobe Flash が必須で、代替手段として HTML5 に対応していないため、Adobe と Microsoft は、Metro スタイル エクスペリエンスに適した Flash Player を提供する点で密接に協力しました。

Windows デスクトップの IE10 と Metro スタイル IE のどちらでも、同じ統合型 Flash Player が使用され、追加のプレーヤーをダウンロードしたりインストールしたりする必要はありません。デスクトップの IE10 では、Flash Player プラグインに依存していた以前のバージョンの IE と同じく Flash が完全にサポートされ、引き続き他のプラグインがサポートされます。Metro スタイル ブラウザーでは、別個の ActiveX コントロールまたはプラグインは引き続きサポートされません。

Windows デスクトップの IE10 では、どのサイトの Flash コンテンツでも再生できますが、Metro スタイル IE では互換表示 (CV) 一覧に掲載されたサイトの Flash コンテンツのみ再生できます。それらのサイトの Flash コンテンツを再生したときに Metro スタイル IE に最適なユーザー エクスペリエンスとなる場合、Flash コンテンツが含まれるそのサイトが CV 一覧に掲載されています。たとえば、コンテンツをタッチしたときの応答性はどうか、オンスクリーン キーボードでうまく機能するか、バッテリ寿命に影響を与えるか、表示されるプロンプトは、Metro スタイルのユーザー エクスペリエンスのガイドラインに従っているか、などです。Metro スタイル エクスペリエンス内でサポートされない機能 (ロールオーバーや P2P 機能) に依存していて、この機能がないと明らかに品質が低下するサイトの場合、デスクトップの Flash に対応した IE で実行した方が良い結果が得られます。ブラウザーに提供されるコンテンツは、サイト開発者が制御し続けます。開発者は、Metro スタイル IE に HTML5 コンテンツを送信したり、Metro スタイル IE ユーザーにデスクトップでサイトを実行することを勧めるプロンプトを表示したりすることができます (詳細についてはここをご覧ください)。

優れた Flash Player エクスペリエンスは、Windows 8 を実行するタッチ主体の PC を含む、あらゆるフォーム ファクターの PC における妥協のないエクスペリエンスの一部です。HTML5 エクスペリエンスを用意していないサイトでのエクスペリエンスについて、ユーザーからフィードバックをいただきました。たとえば、pbskids.org を iPad で再生してみてください。Beeline (英語) などの一部の従業員ソリューションには Flash が必要です。このサイト (英語) のような一部の財務管理サイトにも Flash が必要です。youtube.com などのサイトでも、Flash で最良のエクスペリエンスが実現されます。

Adobe と Microsoft は、HTML5 でも Flash でも一貫して機能するタッチ ジェスチャ (ダブル タップやピンチによるズームなど) のサポートを追加しました。Metro スタイル エクスペリエンス内でタッチ (ロールオーバーなど) と互換性のないデスクトップ Flash 機能を無効にする点で、Adobe と Microsoft は連携しました。Flash の他の機能の多くはタッチでも正常に機能します。

さらに、両社は Metro スタイル エクスペリエンスで PLM のサポートを強化することにより、バッテリ寿命の向上でも連携しました。Windows の Flash では、バッテリを浪費する可能性があるビデオ処理を専用のビデオ ハードウェアにオフロードすることが既に可能になっています (リンク (英語))。この処理により、応答性とパフォーマンスも向上します。

Adobe と Microsoft は、セキュリティと信頼性の問題を解決する点でしばらくの間密接に連携しており (たとえば、ここ (英語) やここ (英語) をご覧ください)、SDL (英語)/SPLC および ASLR などのベスト プラクティスと、ハングやクラッシュに関する情報を共有してきました。IE と同じように Flash を Windows Update 経由で更新することで、ユーザーが簡単にセキュリティを強化できるようになっています。Microsoft と Adobe は、セキュリティ更新プログラムの配信に関して Windows ユーザーの期待に応えるよう引き続き努力しています。さらに、アクセシビリティ、管理性、プライバシーの点でも協力しています。

Windows 8 に搭載された Flash Player は、限定的なモバイル サブセットではなくフル PC 実装がベースとなっており、Windows 8 でサポートされる新しいチップ アーキテクチャでの利用に備えています。Adobe は、Metro スタイル IE の同じ Flash Player サポートを、x86/64 PC と Windows RT PC (ARM プロセッサで実行された Windows) の初期製品の両方で提供できるように取り組んでいます。

開発コミュニティにとって、プラットフォームの継続性とテクノロジの選択肢は重要です。Metro スタイル IE10 の Flash は、既存のサイトが、ユーザーに提供するエクスペリエンスに適したペースかつ意味のある仕方で HTML5 テクノロジへ移行するための橋渡しとなります。たとえば、HTML5 では現在一部の高品質ビデオ コンテンツやゲーム シナリオがサポートされていません。

今後数週間以内に、MSDN や Adobe Developer Connection などの通常のドキュメント チャネルをとおして追加の技術情報を発表いたします。それらの詳細情報には、開発者が Metro スタイル IE で自分のサイトの Flash コンテンツをテストする方法や、サイトを提出して CV 一覧への追加を検討してもらう方法などがあります。さらに、このドキュメントには、開発者、デザイナー、コンテンツの発行元が Metro スタイル IE でうまく再生される Flash のエクスペリエンスを作るのに役立つベスト プラクティス ガイドも含まれています。これらのベスト プラクティスは、タッチ対応 HTML5 サイトの作成に関する既存の推奨事項を補完するものとなります。

Windows 8 の IE での既定の "追跡拒否" (Do Not Track)

Windows 8 の IE10 は、既定で "追跡拒否" (Do Not Track) 信号を Web サイトに送信します。ユーザーは、この既定の設定を自由に変更できます。この決定は、かなりたくさんのユーザー データがオンラインで収集される時代に "既定でプライベート" なエクスペリエンスを Windows ユーザーに提供するという私たちの取り組みを反映するものです。IE10 は、既定で "追跡拒否" (DNT) 信号を送信する初めてのブラウザーです。

IE 10 で既定の追跡拒否設定を変更することで、私たちはユーザーにすばらしい Windows エクスペリエンスを提供するという取り組みの範囲を広げています。企業で追跡拒否信号を使わない場合に備え、IE 10 ではユーザーが不要な追跡を 2 回のクリックでブロックできる追跡防止リストも引き続きサポートされます。この変更を過剰に感じる方と不十分と感じる方がいると思いますが、私たちは進歩であると見なしており、ユーザーは主に自分のデータを収集するように設計された製品よりもプライバシーを重視した設計の製品を好むと考えています。

DNT に関して進行中の他のアクションについては、ここ (英語) をご覧ください。

ベンダー プレフィックスと試験版から安定版への Web の移行

Windows 8 Release Preview の IE10 では、Windows 8 Consumer Preview 以降 Candidate Recommendation (CR) ステータスになったか、2012 年中に CR になる標準のベンダー プレフィックスなしバージョンのサポートが追加されています。

IE10 におけるこの変更により、Web 開発者は各種ブラウザー間で一貫した動作を行うマークアップを簡単に記述できるようになります。具体的には、Release Preview から IE10 ではプレフィックスのない形式の W3C ドラフト標準として、CSS 遷移、変換、アニメーション、グラデーション、CSS フォントの font-feature-settings プロパティに加えて、Indexed Database API (IndexedDB) や requestAnimationFrame() などのプラットフォーム API がサポートされるようになっています。

これらの標準は、IE10 でサポートされるすべての W3C ドラフト標準をテストした後に選択されました。また、機能の主な使用事例において IE10 以外の 2 つ以上のブラウザーで安定していて (期待されるプロパティ/値が大幅に名前変更されたり、削除されたりしない)、サポートされており、相互利用可能であるだけでなく、プレフィックスのない形式を含めて既に Web で使用されている標準を探しました。

ブラウザー ベンダーは通常、仕様が CR になるとベンダー プレフィックスを削除します。Windows 8 Consumer Preview を使って開発され、Microsoft ベンダー プレフィックスに依存するサイトやアプリとの互換性を確保するため、IE10 では -ms- ベンダー プレフィックスが付いた形式も引き続きサポートされています。IE10 では、他のいくつかの標準のベンダー プレフィックスが付いた形式しかサポートされない点に注意してください。それらの仕様はまだ十分に安定しておらず、相互利用可能でないためです。たとえば、CSS Flexible Box Layout (英語) などです。

ベスト プラクティスとして、開発者は通常プレフィックスのないバージョンのプロパティを追加してページの "将来を保証" します。次の宣言セットは、プレフィックスのない CSS 変換をサポートする将来のブラウザーに対応するようになりました。

-webkit-transform: rotate(30deg);

-moz-transform: rotate(30deg);

-ms-transform: rotate(30deg);

-o-transform: rotate(30deg);

transform: rotate(30deg);

他の主なプラットフォームの変更

Release Preview では、引き続きパフォーマンスが向上しています。Web ページはしっかりと "指にくっつき"、コンテンツをパン、ズーム、スケーリングするときも高速で滑らかでなければなりません。Chalkboard Benchmark では、いくつかのパフォーマンス向上の結果を確認できます。このツールでは、上下左右にパンしながら "黒板 (chalkboard)" を拡大および縮小することで、ブラウザーがこれらのよくあるタッチ操作をどれほど効率的に実行するかが測定されます。この場合の IE10 のパフォーマンスは、Internet Explorer のハードウェア アクセラレーションが機能していることの良い例です。

パフォーマンスの向上により、タッチのサポートが強化されます。たとえば、Web ページ コンテンツ (固定要素、サブスクローラー、アニメーション、ビデオ) の完全に独立したコンポジションが可能です。さらに、ローエンド ハードウェアでのパフォーマンスも向上しています。リソース消費の激しいサイトをローエンド ハードウェアで表示しても、点滅やちらつきが減りました。これらの改良点により、IE10 での全画面ビデオ再生 (HTML5 ビデオと Adobe Flash Player の両方) のサポートが改善されました。

Chakra JavaScript エンジンのパフォーマンスも引き続き向上しています。JavaScript を大量に使う Web アプリケーション (HTML5 ゲームなど) は、動的なプロファイル ベースの JIT、浮動小数点数の型専用のコード生成、関数のインライン展開、ガベージ コレクションのために目に見える中断を減らしながらアイドル メモリのフットプリントを減らすための微調整の恩恵を受けることになります。

標準のサポートも多くの方法で強化されました。IE10 では、IVS/Emoji 文字、classList API、および animation-direction CSS プロパティの新しい reverse 値と alternate-reverse 値がサポートされるようになりました。DOM 例外は W3C WebIDL 仕様を満たしており、開発者はコンストラクターを使って、W3C 仕様を満たしながら Blob オブジェクトを作成することができます。さらに、すべてのモードから従来の DX フィルターが削除されました。

HTML5 のアプリケーションとサイトは、インスタント化可能なジェスチャ イベント処理を実行する MSGesture API をとおして、タッチにより多くのことを行うことができます。

現在もこれからもより良い Web へ

Web サイトとアプリケーションの両方をより良くする HTML5 のチャンスは続いています。これらのチャンスは、Web 上のすべてのユーザーの興奮を誘います。

そのような Web に早く到達するため、開発者の皆さんにはサイトで使用されている古いパターンや無効になったパターンを更新することを引き続きお勧めします。CV 一覧には、無効になったライブラリ (このサイト (英語) など) を使っていたり、機能検出ではなくブラウザー検出に依存しているため、シミング (英語) が必要なサイトの例が記載されています。私たちに報告される互換性の問題は、IE 自体の問題よりも、IE を検出し、他のブラウザーとは異なるコンテンツを IE に送信するサイトに関連するものが多くを占めています。IE ブログには、機能検出コード パターンのサンプルを含んでいる記事がいくつかあります。開発者の皆さんは、たとえばこの記事を参考にしていただけます。

各ブラウザーの HTML5 エンジンの品質や正確さには、まだ大きなばらつきがあります。私たちは、プレフィックスなしで IE10 がサポートするようになったすべての機能のテスト ケースの更新情報を W3C に提出します。CSS ワーキング グループのメンバーおよび共同編集者として、私たちは同僚と協力してこれらの仕様を Candidate Recommendation まで進めます。私たちは、相互運用性とマークアップ共通化 (Same Markup) の実現に向け、HTML5 標準化団体で開発中のテスト スイート (英語) への貢献も続けています。今回は 240 のテスト (英語) を標準化団体に提出して更新しました。これらのテストは IE Test Center でもご参照いただけます。各ブラウザーでマークアップ共通化のサポートが強化され、同じ結果を得られるようになれば、HTML5 の目指す世界が実現されていきます。

IE10 で利用可能になった新機能の完全なリストは、IE10 開発者向けガイドでご確認いただけます。更新された IE10 を試すには、Windows 8 Release Preview をダウンロードしてください。引き続き、開発者のコミュニティと連携して取り組みを続けていきたいと思います。また、Connect (英語) でのフィードバックをお待ちしております。

—Internet Explorer 担当コーポレート バイス プレジデント Dean Hachamovitch