Cloud First時代のITアーキテクト視点(1)~新たな方向性と世界観に舵を切ったマイクロソフトのプラットフォーム戦略


クラウドを中心としたITの変革期を迎えている現在、ITアーキテクトの役割や考え方も変化が求められています。本ブログシリーズではいくつかのトピックを題材にITアーキテクトが持つべき視点について議論してゆきたいと思います。
第1回目となる今回はマイクロソフトのプラットフォーム戦略について取り上げます。
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デバイス、アプリケーション、ビッグデータ、そしてクラウド。これらの領域に起きている変化はメガトレンドと呼ばれ、ITの世界に大きなシフトを起こすものとして日々色々なニュースが流れているのはご存知のことと思います。

調査会社も様々な数字を挙げて、ITにおいて大きな機会があることを伝えています。
例えば、
· 17か国に渡るインフォメーションワーカーの52%が仕事に3つ以上のデバイスを利用している(出典:Forrester Research)。
· 外部向けアプリケーションの実装の25%がモビリティ、クラウド、分析とソーシャルへの対応に費やされるであろう(出典:Gartner)。
· 2020年までにデジタルデータの総サイズは40ゼタバイトになり、そのうちの90%は非構造化データとなるであろう(出典:IDC)
· 2020年までにIT総支出の45%はクラウド関連になるであろう(出典:Forrester Research)。

このようにクラウドを始めとした技術革新のスピードは速く、その技術革新を前提としたビジネスへの応用もますます活発になってきています。

この状況は技術者にとっては活躍の機会が増えて非常にうれしいことである一方、今利用可能な技術のなかから何を採用するか、いつどのようなかたちでクラウドに対応するか、といった選択の責任も重くなってきていることを実感されている方も多いのではないでしょうか?

でも悲観的になることはありません。技術とビジネスの環境変化に適応するために技術者が行わなければならない意思決定をサポートするためにプラットフォームがあるのです。

マイクロソフトはそのような環境の変化に対応するためのプラットフォームのビジョンと戦略を「Cloud OS」と呼んでいます。

技術者にとってCloud OSの最も魅力的な点を挙げるとしたら、以下のことになるでしょう。
「Cloud OSならあなたが1つのスキルセットをマスターすればアプリケーションやデータをどこにでも配置できる」

あらゆるアプリケーションをすぐにクラウドに乗せる、という決定を下せる企業や組織はないでしょう。でもその間も技術変革は続いています。いよいよクラウドに乗せるという決定が下されたときに技術者としてすぐに対応できるものでしょうか?

Cloud OSであればオンプレミスでもクラウドでも同じ基盤技術を利用できるため、オンプレミスからクラウドへの移行もスムーズに行きます。技術者であるあなたは、来るべきクラウドへの移行の時期が熟するのを待ちつつ、オンプレミス環境で以下の技術を活用し準備を整えておけばよいのです。

1. フレキシブルな開発環境
Cloud OSでは従来からの.NET Frameworkに加え、JavaScript、Java、PHP、Ruby、Pythonといった様々な言語でアプリケーションを開発するためのSDKやライブラリを提供しています。マイクロソフトはMicrosoft Open Technologies(http://msopentech.com/)という関連会社を設立し、OSSに対しても多大な投資を行っています。また、チーム開発基盤であるTeam Foundation Serverの様々な機能をVisual Studio Onlineというクラウドサービスとしても利用可能です。つまり、オンプレミス環境で運用されるアプリケーションだとしてもクラウド上で開発・テストを行うことができます。

2. 一元化された管理
System Centerは自社やお客様のデータセンターのみならず、Azureにあるコンピューティングリソースのプーリングやプロビジョニングなどの自動化やシステム運用を一元的に管理できます。果てしなく増大するストレージ容量、地理的にまたがるシステムの冗長構成やディザスタリカバリーへの対策も、クラウドを含めて管理可能です。

3. 共通のアイデンティティ
Active Directoryのグループポリシーを採用する企業や組織は多いですが、クラウドではまったく別の認証技術の利用を余儀なくされているのが一般的だと思います。システムのハイブリッド対応に認証は避けて通れない技術の1つですが、Active Directory Federation ServiceとAzure Active Directoryを利用すれば、他のクラウドも含めてシングルサインオン環境を構築することが易しくなります。逆にクラウドからActive Directory技術を適用することも簡単なので、SaaSマーケットへの参入を検討しているISVには強力な技術ソリューションと思われます。

4. 統合化された仮想化技術
AzureのコンピューティングリソースはHyper-V技術をベースとしたファブリックコントローラーで制御されています。つまり、Hyper-Vの仮想マシンはオンプレミスとクラウドを自由に行き来できるということです。また仮想ネットワークやファイルシステムの仮想化も高レベルで統合されているので、これからのアプリケーションは自らの配置場所を意識することはほとんどなくなってゆくでしょう。ちなみに前述のSystem Centerを使えば仮想マシンやオブジェクト、データの移動が更に簡単になります。

5. 包括的なデータプラットフォーム
RDBMSとしてSQL ServerはPaaSとしてのSQL Databaseに加え、IaaSとして仮想マシン上に配置することで、スケーラビリティや性能(SQL Server 2014からIn-Memory OLTP技術も取り込みました)はもちろんコストやコンプライアンスなどの面でも柔軟な選択肢を提供します。またNoSQLとしてはAzure Storageがあり、そしてBig Data を処理するための業界標準プラットフォームであるHadoopもオンプレミス環境に加え、HDInsightというクラウドサービスとしても利用可能です。トータルとしてあらゆる種類のデータを大量にかつ高速に処理可能なデータプラットフォームを提供しています。

このようにCloud OSは複数のCPU、ストレージ、ネットワークを抽象化し、しかもアプリケーションを配置・運用できる場所をクラウドにまで広げるという意味で、まさにクラウド時代のプラットフォームと言えます。

前述の5つの技術要素を活用してソフトウェアの設計・開発・運用を行えば、あなたのアプリケーションにクラウドのコア特性を取り入れたことになります。

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図1: Cloud OSによる一貫したプラットフォーム(出典: Introducing Cloud OS for architects – http://download.microsoft.com/download/B/C/8/BC864212-F00D-483D-9CAD-CE5593EE010D/Introducing_Cloud_OS_for_Architects.pdf

もちろんCloud OSはソフトウェア技術者に留まらず、プラットフォームとしてあらゆるステークホルダーに多くの恩恵をもたらします。

まとめとして、ここでは大きく分けて4つの領域におけるCloud OSのメリットを紹介します。

1. データセンターを変容する
これまでデータセンターは必要に応じてサーバーを増やしながら成長してきました。その結果データセンターの規模は不規則に広がり複雑化したため、管理が困難かつコスト高になってきました。このような状況において仮想化によるサーバーのコンソリデーションは増大する複雑性に対する解決策になります。
Cloud OSではこれを更に進化させて、個別のサーバーよりむしろコンピューティングリソースの単位でデータセンター全体を管理するというアプローチで、自社であってもサービスプロバイダーのものであっても、あるいはパブリッククラウドであっても、アプリケーションが必要とするときにコンピューティング、ネットワーク、及びストレージの能力を用意できます。

2. あらゆるデータに対する洞察を解放する
OLTPシステムに代表される従来の構造化されたデータセットからフラットファイルに存在するログやストリーミングデータまで、現在はかつてないほど多くのデータソースが存在します。このデータの多様性と蓄積される速度の増大に対処し、これら大容量のデータから利用可能な情報を取り出してビジネス上の洞察を得ようというのが、ビッグデータの中心的なアイデアです。
Cloud OSではあらゆる種類のデータから、新しい洞察を得るために情報をマイニングできる包括的なデータプラットフォームを提供します。しかも毎回ITの専門家にリクエストすることなしに、あらゆる人々が自らExcelやPower BIのような慣れているツールを利用して深い洞察を生み出し、それを視覚化し、共有することができます。

3. 人中心のITを強化する
デバイスの増加とともに、ITのコンシューマー化が進み、ユーザーはより頻繁に仕事で“サポート外のデバイス”を持ち込むようになりました。ユーザーはスマートフォンから個人と会社のメールの両方にアクセスできることを望み、タブレットからイントラネットやダッシュボードほかファイアウォールの内側にあるリソースにアクセスできることを望んでいます。
Cloud OSでは会社のガバナンスと機密データの管理を維持しながら、どのようなデバイスでも利用できるよう、IT管理者とユーザーの双方をサポートします。

4. ビジネスアプリケーションを革新する
デバイスがインターネットに接続し、大量のデータを駆使してリアルタイムにビジネス上の意思決定に必要な情報を得る、というシナリオが既に当たり前となっている現在、ビジネスアプリケーションが提供すべき機能とそれを構築すべきスピードがますます加速することは間違いないでしょう。しかし同時にエンタープライズにとってどのようなビジネスアプリケーションを構築するか、あるいは導入するかという戦略的な意思決定がより重要になる以上、いくら斬新な技術であろうとビジネス状況を無視して適用することも現実的ではありません。
Cloud OSの強みはまさにビジネス成長のペースに合わせて、必要とされる技術を迅速に取り入れスケールさせる点にあります。

これまで説明してきたようにCloud OSはビジネスとITに機敏性をもたらす統合プラットフォームのビジョンと戦略であり、あらゆる場所から、あらゆるデバイスへユーザーにアプリケーションやデータを提供するということを宣言したことで、マイクロソフトの新たな方向性・世界観に舵を切ったことを明確にしました。

次回はビジネスアプリケーションの革新について、さらに詳しく説明してゆきたいと思います。


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