Windows 7 のデバイス サポートとテストに関する基本的なこと

多くの方々は ( ついに ) ベータ版を入手し、 Windows 7 をインストールして使い始めておられることでしょう。そこで、どのようにテストを通してデバイスをサポートしているか、また、 PC エコシステムの観点でどのような取り組みをしているかについてお話しするのがよいかと思います。ベータ版のリリースとそれに対するフィードバックの分析は大事業であり、私たちがとても重要視しているものです。そして PDC でお話したように、 Windows 7 のエンジニアリングに適用したいことを学んだ分野でもあります。これは Windows の組織全体にわたる壮大な取り組みですが、この投稿の執筆は Windows Experience テストチーム担当の副社長である Grant George がリーダーシップをとっています。このトピックは深く、みなさんはさらにもっと知りたいと思っておられるでしょう。これはまず第一回目であるとお考えください。 --Steven

Windows のデバイスとドライバー

Windows のリリースにおいてもっとも重要な責任のひとつに、ユーザーが持っているすべてのデバイスとそのドライバーに対するサポートと互換性が挙げられます。Windows のソフトウェアとハードウェアをつなぐ抽象化レイヤーは、OS の極めて重要な部分です。そのレイヤーは、さまざまな側面を持つハードウェア エコシステムにおいて、すべてのパートナーとのインターフェースの役割を果たしているドライバー モデルを介して接しています。Windows は今日、広範囲にわたるデバイスをサポートしています。たとえば、オーディオ デバイス (スピーカーやヘッドセットなど)、ディスプレイ デバイス (モニターなど)、プリンター、FAX やスキャン デバイス、あらゆる形式、サイズ、および機能のデジカメやポータブル メディアとの接続などです。Windows はこのようなデバイスを開発して市場やユーザーへ出荷している世界中の会社に対してオープンなプラットフォームです。そして、私たちの仕事は、これらのエコシステムや選択肢をよく理解し、デバイスやドライバーが私たちのお客様のために正しく動作することを確実にすることです。それには、Windows 7 の開発期間中を通して、デバイス提供者との連携が不可欠です。

ドライバーは、デバイスと Windows OS との間のインターフェースの役割を果たします。そして、WDM (Windows Driver Model) に属しています。WDM は当初、Windows 用のドライバーを簡単に書けるようにするための、カーネル モード ドライバーの中間層として作られました。ドライバーにはさまざまな種類があります。クラス ドライバー (似たようなハードウェア クラスのデバイスをまとめてサポートするハードウェア デバイス ドライバーで、OS とのやりとりのためにメーカーは自身の製品を標準プロトコル互換とする必要があります) と、デバイス個別のドライバー (デバイス メーカーによって提供される、固有のデバイスやデバイスのあるバージョン用のドライバー) が主な2つです。

パートナーサポート

ハードウェア パートナーに対するサポートは、Windows Driver Kit (WDK) と、認証用の Windows Logo Kit (WLK) の形で行われます。WDK はデバイス ドライバーを開発できるようにするもので、Vista 以降、前の Windows Driver Development Kit (DDK) に取って代わりました。 WDK には、DDK コンポーネントのすべてに加え、Windows Driver Foundation (WDF) とインストール可能ファイル システム (IFS) キットが含まれています。Driver Test Manager (DTM) もありますが、これは WDK とは別のものです。WLK は Windows 用にデバイスを認証する助けとなります (自動化されたテストやテスト用のランタイム フレームワークが含まれています)。デバイスでマイクロソフトの “Designed for Windows™” ロゴを使用するには、ハードウェア メーカーはこれらのテストを実行してパスする必要があります。この認証プロセスは、デバイスが Windows OS と相互に作用する際に一定レベルの品質と互換性を確保する助けとなります。WLK のテストに合格したハードウェアとドライバーは Windows ロゴや Windows Update からドライバーを配布する資格を得、また、オンラインの Windows Marketplace から参照できるようになります。

検証とテスト

Windows 7 において、ドライバー モデル検証、新しいデバイスやレガシー デバイスのテスト、およびドライバーのテストを改善しました。Vista と比べて、製品のエンジニアリング サイクル全般を通じ、ドライバー プラットフォームの確認とレガシー デバイスとその付随ドライバーの検証により一層重点を置いています。各デバイスのインストール ベースに基づいたデータは、テストに不可欠な要素を示していますが、私たちはこのデータを、売上データやハードウェア メーカーの計画表、自発的に選択した匿名の遠隔測定などさまざまな情報源から集めています。私たちは、問題やバグの発見が過去のリリースよりもずっと早い段階でもたらされるよう、製品のこの分野におけるテストの検査方法の仕組みを集中化・標準化させました。また、プラットフォームやインターフェースの変更を早めに外部のハードウェア パートナーに伝え、彼らのテスト サイクルが私たちのスケジュールと足並みをそろえられるようにする取り組みを強化しました。さらに、最近のトレンドを含む実世界の使用データ、各デバイスの名声、およびテスト ルームで行っている優先順位付けの、より強固な相関関係を導き出しました。これは、一般向けに Windows 7 をリリースする直前直後にマーケットに登場するような新規または新興デバイスの場合、特に重要です。

Windows 7 ユーザーに対してデバイスやドライバーの接続性および機能性において高品質なエクスペリエンスをもたらすもうひとつの重要な要素は、Windows 7 の全体的なエンジニアリング プロセスを段階的にすることです。今回のリリースに向けて、すべてのエンジニアリングのチームは、よく構成され段階化された開発プロセスに従ってきました。Windows 7 の新しい機能や性能の開発/プログラミングを 3つの異なる段階 (マイルストーン) に分割し、それぞれの段階の最後に統合および安定化の時間を設けました。そこでは Windows 7 の開発全体においてコード ベースが極めて安定していることを確認しました。そして、デバイスおよびドライバーの検証テストは各マイルストーンでいつも行っていました。Larry が彼の投稿でこの件について述べていたのを覚えている方もいらっしゃるでしょう。プログラミングの期間中、プログラム マネージャー、開発者、およびテスターはとても緊密に働きました。外部のパートナー、特にデバイス メーカーのパートナーとも、Windows 7 の変更点についてのフォーラムを早い時期に開催するなどして関係強化に努め、検証についても密接に取り組んでいます。計画そして実行を最重要視しました。つまり、仕事を計画し、それから計画に基づいて仕事をするということです。なぜなら、これは、機能内容およびスケジュール全体のスナップショットの両方において Windows 7 の新しい機能の開発や出荷がはるかに予測しやすくなると信じているからです。これにより、「私たちはこうします」と言ったとき、計画の進捗状況に関して外部のパートナーの私たちを見る目が厳しくなったことは認識しています。しかし同時に、Windows 7 の開発期間中、デバイス エクスペリエンスにおいて外部のパートナーが私たちとどう協働すればよいか確信を深めたと期待しています。

どのデバイスをテストするかの決定

社内のプログラム マネージメント チームがデバイスのマーケット シェア分析を手伝ってくれています。データの多くはCustomer Experience Improvement Program (顧客エクスペリエンス改善プログラム) によってもたらされており、顧客ベースの実際に使用されているハードウェアのデータがわかります。たとえば、ディスプレイ デバイス単独で 16,000 以上の固有のハードウェア ID があります。多くのことのように、私たちは、ひとつのデバイスが正しく機能しないだけで、Windows 全体のエクスペリエンスやアップグレードの評判を落とすことを理解しています。そして、この共有された理解をぜひ強化したいと思います。

新しいデバイスは通常、ユーザー数は少ないですが、ドライバーは最も新しいコードである (または、コード ベースが初めて新しいデバイスに出会った) 場合が多いです。そしてデバイスが主流となるにつれて、マーケット シェアは伸び、多くのメーカーはドライバーを開発および改善し続けます。これはユーザーのためであり、私たちのテストのためでもありますが、常にあるデバイスについて、その最新ドライバーを使用することが重要です。

デバイスの寿命が尽きるまで、私たちは外部のデバイス パートナーと緊密に働き、私たちのテスト ルームでは古いデバイスも新しいデバイスも Windows 上で正しく動作し続けられるようできる限り忠実に優先順位を付けています。あらゆるデバイス クラスに対して市場でのトレンドに細心の注意を払うことにより、次の分野において指針となる決定を下すことができます:

• 追加設定なしでサポートするべき重要で主流のデバイス
• Windows Update でどのドライバーを入手可能とするか
• 私たちのテストでどのデバイスとドライバーに焦点を当てるか

市場動向を注意深く見守ることのもうひとつのメリットは、デバイス ファミリーの同値ベースの見方の作成です。

同値類

私たちは同値類の概念をハードウェア (デバイス) テストのマトリックスを定義および優先順位付けするのに使用しています。同値類の作成には、ものを関連したデバイスで同等のプロパティに基づいてグループ分けします。たとえば、化学薬品会社で勤務していて、自動車用ワックスの添加物を実際の車両でテストするのが仕事だと想像してください。限られたテスト予算の中で、製品をテストするメーカーやモデルの数は最大にしたいと考えるでしょう。まず、現在の市場空間を分析することにより、テスト マトリックスのための最良の選択ができます。

最初に分析したテスト車両は、青色の 2003年型フォード マスタングとしましょう。同じ青色の塗料がフォードの 2003年と 2004年のすべてのモデルで使用されており、マツダの 2005年のすべてのモデルでも使用されていることがわかっています。つまり、最初のテスト車両は、同値に基づいた表において、いくつかの項目を代表していることになります:

さて、メルセデス C240 の 2001 年型シルバーを見てみましょう。メルセデスとクライスラーは提携しており、調査したところ、クライスラーの2006年から 2009年のモデルに同じシルバーの塗料が使用されていたことが判明しました。つまり、テスト マトリックスに基づいた同値類は次のようになります:

実際の各車両を注意深く分析して、潜在的なテスト範囲を最大化するために活用できる同値関係を構築しました。ひとつのメーカー/モデルをテストすることは、理論上、多数をテストするのと同等です。もちろん、現実の世界では、異なる会社は異なる技法で塗料を塗布するでしょう。これはひとつの変数となるので、テストの目的に応じて適切に特性を分類するための追加情報が必要です。

コンピューター デバイスのテストもよく似ています。市場には何千もの異なるデバイスがありますが、多くは主要コンポーネントを共有していたり、過去のバージョンの再成型であったり、メモリーやクロック速度、画素数、コネクター、あるいは単にヒートシンクの種類だけの違いだったりします。ディスプレイ デバイスを例にとりましょう。市場には 16,000 以上のディスプレイ デバイスが存在します。しかし、同値の観点で分類すると、マーケットの 90% は約 60 種類の GPU に相当します。同値に基づき入念に構築されたテスト マトリックスへもう少し追加することにより、全 GPU の 99％ 以上をカバーすることができます。ドライバーの開発者は、ドライバーの対象を一連のハードウェアとすることで、同値を活用できます。ドライバーのインストール パッケージは、ハードウェア ID によってサポートするデバイスを区別します。

最新のコンピューター デバイスはいずれも、デバイス メーカー、種類、およびクラスに基づいた個別のハードウェア ID が割り振られています。多くの ID (PCI、PC カード、USB、IEEE 1394 デバイス) は、それぞれのデバイスの種類の業界標準団体によって割り振られています。

私のディスプレイ アダプターのデバイス ID を見てみましょう:

PCI\VEN_10DE&DEV_0611&SUBSYS_C8013842&REV_A2

PCI-SIG (全 PCI デバイスの ID 割り当てを行っている標準団体) のサイトへ行って 10進法で検索してみると、これは NVidia PCI の ID であることがわかりました。私のシステムをもう少し見てみると、

C:\Windows\System32\DriverStore\FileRepository

に NVidia のドライバーを見つけました (“nv_lh” で始まるフォルダー)。ドライバーの INF ファイルのひとつを開いてみると、次のような示唆的な行を見つけました:

NVIDIA_G92.DEV_0611.1 = "NVIDIA GeForce 8800 GT”

ドライバーの INF ファイルをさらに細かく見てみると、同じ G92 GPU が以下のデバイスすべてで使用されていることがわかりました:

• NVIDIA GeForce 8800 GTS 512
• NVIDIA GeForce 8800 GT
• NVIDIA GeForce 9800 GX2
• NVIDIA GeForce 8800 GS
• NVIDIA GeForce 9600 GSO
• NVIDIA GeForce 8800 GT
• NVIDIA GeForce 9800 GTX
• NVIDIA Quadro FX 3700

ネットで少し調べてみると、興味深い情報が明らかになりました。「コード名 G92 の 8800 GT は、2007 年 10 月 29 日にリリースされた。このカードは初めて 65 nm プロセスへ移行し、PCI-Express 2.0 [13] に対応。2 スロットだった 8800 GTS や GTX とは対照的に、シングル スロットのクーラーを搭載している。また、65 nm プロセスにより、GTS や GTX より省電力化されている。」-WikiPedia

つまり理論上は、もし自分でディスプレイ アダプターのテストを実行したとすると、ほかの関連デバイスでも同じ結果になる可能性が十分にあります。

Windows 7 でのドライバーの目標

Windows 7 での主要な目標の一つは Vista で認定されたすべてのドライバーとの互換性で、人々がシームレスにアップグレードできるようにすることです。これは、どうテストするかの指針となるいくつかの要件に分類することができます。:

• 基本的な機能のドライバーは in-box にする。(in-box とは、Windows のインストールの一部として利用可能にするという意味です。) 主流のストレージ、ネットワーク、インプット、およびディスプレイ デバイス用のドライバーがこれに該当します。つまり、OS がインストールでき、ユーザーがオンラインにアクセスできる状態にします。そして、必要に応じて、追加のドライバーは Windows Update から入手できるようにします。
• ドライバーの更新あるいはインストールを最小限の労力でできるようにする。
• ドライバーが更新された際、新しいドライバーで問題が発生しないようにする。
• ドライバーは信頼性のあるものにする。

多く寄せられた質問に、ドライバーの入手可能性があります。人々がドライバーを探すのには主な理由が 3つあります: Windows をクリーン インストールするため、新しいコンピューターへデバイスを接続するため、更新されたドライバーが必要であるためです。このブログの読者の方にとって、熱心なユーザーとしても、会社、友人、および家族のサポート/IT インフラ担当者としても、ドライバーを入手して確実にマシンを更新することは、嫌いになれない「趣味」のようなものであることは強く認識しています。私たちはみな最新かつ最高のものが欲しいだけで、それ以上でもそれ以下でもありません。

クリーン インストールは、Windows 7 のベータの段階において私たちみなが高く評価していることです。クリーン インストールは多くの人にとって重要であると同時に、何度も繰り返される/主要なエクスペリエンスではないということを明らかにしておくべきです。それでもなお、in-box ドライバーと Windows Update から入手可能なドライバーの組み合わせは、非常に幅広い PC の役に立つでしょう (たとえば、新しい Atom ベースのマシンでクリーン インストールをすると、ほとんどのドライバーがインストールされていることがわかるでしょう)。一方で、一部の PC 用ドライバーは PC メーカーからしか入手できず、さまざまな理由により Windows Update やデバイス メーカーのサイトからもダウンロードできない場合があります。たとえば、モバイル グラフィック ドライバーは一般的に PC メーカーからのみ入手可能で、グラフィック コンポーネントのメーカーからは入手できません。これは、各 PC メーカーへのチップセットの出荷方法により取り決められたことです。

明らかに、既存のデバイスを新しい PC に接続するのはよくあることです。このケースでは、昔デバイスに付いていた CD/DVD を紛失してしまい、(「最初にセットアップ プログラムを実行してください」という警告を無視して) ただ差し込んでしまったかもしれません。繰り返しになりますが、私たちの目標はこれらを Windows Update から提供することです。ハードウェア メーカーはいろいろな理由により頻繁に更新したり非常に大きいサイズのダウンロード プログラムを提供したりしていますが、それは Windows Update からの配布に適していません。そのようなケースでは、デバイスのメーカーからドライバーを探すよう警告を出します (多くの場合、リンクも一緒に表示します)。

ドライバーを更新する行為は、私たちみなにとって馴染み深いことです。なぜなら、問題を解決するためには「最新のドライバーを入手してください」というメッセージがよく表示されるからです。これは特に、新しいドライバーが全体の向上に加えてパフォーマンスを向上させたりより多くの機能を提供したりする場合に、熱心なゲーマーの間で見られます。更新ドライバーを入手する第一の方法は Windows Update の追加選択からが一般的ですが、やはり多くの場合、最新かつ最高のものはハードウェア メーカーのサイトから直接ダウンロードすることになります。

私たちの目標は明白で、さまざまなデバイスに対するドライバーが入手可能で、しかも高品質であるようにすることです。PC や関連したデバイスの出荷に貢献している対等のパートナーがたくさんいますが、広範なユーザーに対して高品質なソフトウェアとサポートが提供できるよう、系統だった方法の構築に力を入れています。

Windows 7 でのデバイスとドライバーのテストの尺度

下記の表は、今までの Windows 7 の開発で私たちが直接テストしたことが明白なデバイスの例です。これは単に直接テストの抽出見本であり、ここにリストされていないデバイスも数多く直接テストまたは同値類でカバーされています。

この情報は、認定されたデバイスがすべて掲載されている WHQL Web サイトなど、いろいろなところで提供しています。このブログの目的からして、間違いなく話し合いの根拠となるであろうこのリストを提供するのは意味があると思い掲載しました。