エヴァンゲリオンで有名な会社のシステムを支えるエンジニアたちの物語


株式会社カラーの Microsoft Azure 事例がマイクロソフト本社サイトにて公開となりました。アニメ業界における Microsoft Azure 利用の公式事例化としてはおそらく世界で 3番目です。( Pixer と Mudoloco に続く)。

ただせっかくの素敵な記事も英語だと内容が伝わりにくいところがあります。そこで MSDN オンラインチームブログ では、この事例の裏話や運用秘話を対談形式でご紹介します。ご登場いただくのは、株式会社カラーのシステム エンジニアの鏡 洋祐さん (写真左)、高野 宏行さん (写真中央) 、株式会社コサットの代表取締役社長・佐藤 一毅 (写真右) です。コサットはコミックマーケット (通称、コミケ) のシステム運用会社であり、今回 も構築運用支援で参画していただきました。

聞き手は、エバンジェリスト 増渕 大輔です。対談ご覧くださいませ。

日本マイクロソフト・増渕 大輔 (以下、増渕): 皆さんよろしくお願いします。さて、技術的なところに入る前に、映像制作スタジオにおける IT 運用業務ってなに?というあたりから入ろうと思います。鏡さん、高野さん、教えていただいてもいいですか?

カラー・鏡 洋祐 (以下、鏡): はい、ITが絡むところですね。おそらく弊社に限らずだと思うのですが、アニメ業界、映像制作業界は、Windows マシンが数百台動いているところが多いです。昔はフィルムで撮っていた撮影現場は、すごい勢いでデジタル化してますから、マシンだらけですよ。主にレンダリングやストレージ サーバーです。カラーでは専用のサーバー ルームを持っていまして、制作業務を進めるにあたって、制作進行の状況などはデータベース管理しています。カットが膨大な数なので、エクセルで管理しているのですが、これから。データベースだけでなく、レンダリング ノードやレンダリング管理サーバーなんかもたくさんあります。

増渕: 大量のサーバーや、ワークステーションを鏡さんと高野さんのお 2 人だけで管理されているわけですね。カラーの社員数はどのくらいいらっしゃるのですか?

カラー・高野 宏行 (以下、高野): 社員数は 40 から 50 位ですが、コアにお付き合いしているパートナー制作会社がたくさんあるんです。例えば、動画専門の会社や、撮影専門の会社、仕上げをする会社、背景美術の会社、といったところです。さまざまな業務を管理するコアな人たちは、プロジェクトの山場の期間だけ、スタジオですので、システムを使う人はその時々に応じて数百人まで増えていました。しかも、当時、日本アニメ(ーター)見本市 をやっていて人がたくさんいましたし、なかなかウェブサイトまでは手が回っていない状況でした。

増渕: Microsoft Azure を採用した経緯は、カラーの企業ウェブサイトとメール サーバーがダウンしたこととお聞きしました。なにが原因でダウンしたのですか?

鏡: もともと 企業ウェブサイト はエンジニアとしてもしていなかったんです。手間もコストもかけてなくて、とあるホスティング サービスのホームプランのようなものを使っていました。作品プロモーションは、別な外部のサーバーを使っていましたし、広報・プレスリリースに大した転送量もないだろうと高を括っていたら、実はすごいアクセス負荷がありました (苦笑)

コサット・佐藤 一毅 (以下、佐藤): カラーさんのサイトは、新しい情報発表があると、ファンが殺到するんです。過去に、何度かセンセーショナルな発表をしていて、ファンとしても「スタジオカラーのサイトに行けば何かあるんじゃないか?」という期待値がありましたね。DVD の発売情報や、テレビ再放送についてなにか世間を騒がすニュースがあったときはサイトを見に行きました。エヴァンゲリオンだけじゃなくて、シン・ゴジラとか日本アニメ(ーター)見本市とかも見に来る人は多いと思いますよ。余談なんですが、エヴァンゲリオンの層と視聴者の層はがっちりあってるなと思ったエピソードがあります。コミケでは、出店の抽選申し込みシステムを運用していてそこそこ負荷が大きいのですが、テレビでエヴァの放送があった時間帯だけ、アクセス数が落ち込んでいるんです。「ああ、コミケに来る方たちは、いまエヴァを見ているんだなー」と手に取るように分かりました。(一同爆笑)

その放送の直後、コミケ側がアクセス負荷に見舞われまして、対応にてんやわんやでした。当時は Microsoft Azure に移行する前で、抽選システムは、オンプレでの運用でしたから、「はやくAzure に移行したい」って強く思ったことを覚えています。

増渕: なんと、コミケが Azure になったのは、ある意味エヴァのテレビ放送がきっかけなんですね!! コミケさんとカラーさんについて、僕が思っていた関係性とは全く逆の話です (笑)

IaaS vs PaaS?? 決め手はコミケの経験値。

増渕: では トラブル対応から、なぜ Azure と出会ったのかというあたりのエピソードを教えてください。

鏡: 当時はシステム トラブルがとにかく大変でした。企業ウェブサイトですが、アクセス負荷による二次災害てきな形で、裏では数百人のメール業務や、制作進行に支障をきたしていたのです。そんなとき、ダニエルさん (写真右から 2 番目) がコミケのウェブサイトが Azure に移行して成功しているという話を聞きまして、技術会社であるコサットの佐藤さんをご紹介いただきました。

佐藤: ダニエルさんは長年、コミケのボランティア スタッフで、コミケのシステム事情をよく知っていました。コミケのイベントが年 2 回しかない関係で、運用しているサーバーは普段は閑散としているのですが、ピーク時の負荷は数千倍とも考えられます。サーバーのキャパシティ設計がしにくいという点で、カラーさんのシステムと似てるなと感じました。コミケのシステムはもとのオンプレから Auzre に移行した 1 年くらいのときで、効果も実感していた時だったので自信をもって、お勧めすることができました。

増渕: コミケさんのアクセス負荷もすごいですよね。リアル イベントの来場者は 3 日間でのべ 55 万人でしたっけ?

佐藤: 最大で 59 万人というのを記録したことがあります (笑)

増渕: コミケ の Web カタログは、C#、WebApps、SQLDB でできてますね。今回のカラーさんの企業ウェブサイトは、Wordpress (PHP)、MySQL、Linux と オープンソース技術ベース。そしてオンプレミス上での構成でしたが、それでも Azure でイケるなという確信はあったのでしょうか?

佐藤: 増渕さんも、気になっていたようで、よく Skype で打合せにはいってもらってましたね (笑)

増渕: はい、いろんな意味で気になりました (笑)

鏡: 正直なことを言うと、既存のホスティング サービスの料金プランをグレードの高いものに変えるとか、AWS さんとか、Azure さん以外のいろいろな可能性は検討していたんです。でも最終的にはコストだけでなく、運用手離れのいい環境に移行したいというニーズがあったので、PaaS として実績が多い Azure に決めました。2 人しかいないエンジニアがあれもこれも対応することはできませんから。でもコストも結果的には安くなったんで、よかったです。

増渕: 既存技術にとらわれない戦略ですね。それでもさくっと移行できたようで安心しました。コサットのツートップエンジニア、田邉さんと堀口さん は、既存のアーキテクチャーいじくりましたね。移行が簡単な IaaS の仮想マシンではなく、あえてPaaS の WebApps にしましたが、ほとんど移行作業かかっていないのもコサットさんがもともと WebApps を使いこなしてくれているからかもしれません。ところでみなさん、改めて確認ですが、本当にちゃんとメンテナンス フリーになったんですか? (笑)

鏡・高野・佐藤 もちろんメンテナンス フリーになりました (笑)

佐藤: 細かいことを説明すると、WebApps のスケールアウトは自動設定にしていて、CPU の閾値は 70% にしています。また、シングルサーバーだった構成は、クラスター構成にして、さらに Web サーバー側にキャッシュ機能を追加しています。自動運転ならではのたまに想定外な挙動もありますが、Azureサポートに確認を取りながら運用しています。心理的にはだいぶ楽です。台数が増えた形跡を見て、そのあとアクセスログを確認し、「あ、いつもよりアクセス多かったんだね」という感じです。スケールアウトの運用ノウハウは、C# だろうと、Wordpress (PHP) だろうと、同じでした。コミケも閾値 70% です。

高野: そうそう、重要なことを忘れそうでした。WebMatrix というツールは素晴らしいですね。あれのおかげで、システム移行作業のテストや本番切り替え作業が一瞬でおわっちゃったので、びっくりしました。単にサーバーの入れ物だけでなく、こういうソフトウェアが充実しているのは凄いなと思います。

今後の展望について

佐藤: コミケの Web 系、データベース系システムは Azure 移行がどんどん加速していまして、95% が Azure に移行しました。夏場に HDD 故障する、という悩みからも解放されて快適です。

鏡: カラーは本業が制作ですからクラウド化は慎重にと思います。確かにクラウドでやりたいことは、まだまだたくさんあります。制作ワークフローなど、業務の流れをつかさどるシステムはクラウドの効果が高いでしょうから。ただ制作現場という特性から、クラウドのレイテンシーはとても気になる課題です。コミケさんやマイクロソフトさんには、Azure のいい点や不向きな点など詳しく教えて欲しいです。アニメ制作・映像制作はまだまだオンプレ文化なのですが、クラウドのおかげでクリエイティブな領域に集中することができると期待していますが、

増渕: 実は僕も「なんでもクラウドで解決するべし」とは思っていなくて、システムとデータは、適材適所、ハイブリットという可能性は十分アリだと思っています。もともとマイクロソフトはオンプレミス向けのソフトウェアを提供している会社なので、クラウドとオンプレミスの配分を調整しながらシステム計画を作っていきましょう。

佐藤: たしかに、Web 屋さんならクラウドだけで事足りるのですけど、システム屋からするとハイブリットというのは重要な考え方ですね。

増渕: では最後に高野さんからも一言お願いします。

高野: (感慨深げに) 本当にメンテナンス フリーになってしまったので…。

増渕: 実感こもってますね! (笑)。高野さんの業務が減っているのはうれしい限りです。今日はみなさんお忙しいところありがとうございました!

一同 ありがとうございました!

次回予告

田邉さんと堀口さんは、株式会社カラーの Web サイトを Azure に移行支援した株式会社コサットのエンジニアです。コミケ Web カタログ、コミケ コスプレ コミュニティの開発・運用も同時に担当している Azure のスペシャリストでもあります。次回の MSDN オンライン ブログでは引き続き彼らを取材してコミケ側の技術情報を語っていただく予定です。

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