PC 製造メーカー各社は、8 月 1 日に RTM を迎えた Windows 8 を使い、Windows 8 用に設計された新しい PC の提供準備を進めています。この革新性と創造性の結晶が一般提供される 10 月を前に、パートナー各社と Microsoft の熱気は日々高まっています。エンジニアリング面のコラボレーションは今までになく順調で、高いパフォーマンス、優れた信頼性、長いバッテリ寿命といった特長が、Windows 8 向けに設計された新しい PC に集約されつつあります。さらに、私たちがどのようにこのプロセスを、ARM プラットフォーム基盤の新世代 PC に拡張したかについても関心をお持ちかと思います。この記事では、Windows RT の開発、さらには Windows RT 向けに設計された新しい PC の開発で進められているコラボレーションについて説明したいと思います。この記事は、エコシステム & プランニング チーム担当バイス プレジデントの Mike Angiulo が執筆しました。
–Steven


お客様に愛される、最高品質の Windows RT と Windows 8 の PC を完成させる。この目標に向けて私たちは、Windows 8 と Windows RT が RTM を迎えた現在も、PC 製造メーカー、シリコン チップ製造パートナー、その他部品製造メーカーなど、エコシステムのパートナー各社と綿密な共同作業を続けています。Windows 8 と Windows RT を基礎に PC 製造パートナー各社から生まれる設計は、いずれも興味深く、驚かされるものばかりです。

PC 製造パートナー各社からは、Windows 8 の Intel ベースと AMD ベースの実にさまざまな設計が生まれています。これらが持つ高速な処理能力と革新的なデザインによって PC の可能性はさらに広がるでしょう。鮮やかな高解像度ディスプレイを搭載した超薄型 & スマートなデザインの PC、大型ディスプレイで没入型のエクスペリエンスをお届けする美しいオールインワン PC、複数のグラフィック カードと高性能のストレージ アレイを搭載したハイパワーのタワー型 PC まで、お客様のあらゆる期待に応えます。さらに、こうした多様な選択肢から最適な価格と機能を組み合わせることで、用途とライフスタイルにぴったりの PC を見つけることができます。

特に嬉しいのは、革新的な Intel の SoC プラットフォームを活用して消費電力を抑えた新しい x86 Windows 8 PC によって、"常時起動、常時接続" エクスペリエンス ("接続維持スタンバイ" とも呼ばれます) が実現されることです。つい先日 Lenovo が発表 (英語) した ThinkPad Tablet 2 は、Intel ATOM® プロセッサ上で驚くべき最新機能の連携を実現しています。これらのシナリオがもたらすさまざまなメリットについてはこの記事の後半で説明いたします。

新登場の PC は、高い信頼性、高速な処理、システム リソース消費の効率化、ソフトウェア読み込みの強化など、同スペックの Windows 7 PC と比較してさまざまな点で優れています。Microsoft も今回のリリースをサポートするさまざまなツールとサポートをきめ細かく提供しています。最新の Ultrabook™ (英語) から最高のパワーと拡張性を持つワークステーションまで、もうすぐ出会える Windows 8 PC にぜひご期待ください。

ARM ベース PC は Windows RT によって新しい時代を迎えます。市場に登場するのは、Microsoft、シリコン チップ製造パートナー、PC 製造パートナーの共同作業が生んだイノベーションの結晶です。以前の記事「ARM プロセッサ アーキテクチャ向けの Windows の構築」では、Windows RT 開発で求められたエンジニアリング作業の内容を詳しく説明しました。新しい Windows RT PC の市場提供に向けたエコシステムにわたるコラボレーションの最新情報は本記事の後半にご用意していますが、まずは前回の記事の重要なポイントを簡単にまとめてみましょう。 

  • Windows RT はかなり多くのコードを Windows 8 と共有し、世界最大のコンピューティング エコシステムの一部として開発、販売、サポートが行われます。
  • NVIDIA、Qualcomm、Texas Instruments の各社による Windows RT 向け SoC プラットフォームすべてで同一の Windows バイナリを実行するという目標を達成しました。この包括的なシステムの基盤には、各社が開発した革新的な ARM CPU があります。
  • Windows RT PC の提供に向けた取り組みを通して、今までになかった新しいシステムが作り上げられることになりました。まったく新しい PC のエコシステムが、新たな可能性を持つ ARM ベースのプロセッサを搭載した新世代の PC を生み出す機会を PC 製造メーカーに提供します。
  • Windows RT PC は、薄くて軽いインダストリアル デザイン、長いバッテリ寿命、統合された品質を実現しています。これらの PC はすべて Windows RT を意図して設計、製造されています。
  • PC 製造メーカー各社が提供する Windows RT PC は、ハードウェア、ファームウェア、Windows RT ソフトウェアが組み合わせられた統合型かつエンド ツー エンドの製品です。ハードウェアとソフトウェアを独自に組み合わせ一体型で搭載する通常の電化製品の場合と同様に、Windows RT ソフトウェアも、新しい Windows RT PC と別に単体で販売または配布されることはありません。搭載されたソフトウェアには、PC の実用的な寿命が終わるまでサービスや改良が提供されます。

Windows RT 関連情報に注目している方の中には、Asus Tablet 600 (Windows RT) (英語) や Surface RT™ (英語) のニュースを覚えていらっしゃる方も多いと思いますが、ASUS に加えて Dell、Lenovo、Samsung の各社からも Windows RT を搭載する ARM ベース PC のデザインを発表予定という嬉しいニュースをお知らせいたします。

詳しい情報は続報をお待ちください。Windows 8 と Windows RT の一般提供が近づくにつれて、PC 製造メーカー各社から製品の詳細情報が明らかになってくると思います。現時点でお伝えできるのは、ユーザーがコンピューターに求める固有のニーズに合わせて現在ハードウェアや周辺機器が開発されており、そこには業界に今まで見られなかったような多様性が生まれているということです。

「最新のエコシステムから生まれたさまざまな機能を採用した Dell の Windows RT タブレットをお使いいただけば、ビジネス シーンでもご家庭でも、できることは今まで以上に広がります。Microsoft の戦略的パートナーであることは私たちにとって喜びであり、もうすぐすべてをお知らせできることを待ち望んでいます」

- Dell PC プロダクト グループ担当バイス プレジデント Sam Burd 氏

私たちの取り組みの独自性は、PC 設計にかかわるパートナーが新しい形で共同作業することから始まっています。各パートナーの最良のアイデアを集約することで、チップセットから実際の操作に至るまでが一体化、最適化されたエンドツーエンドのエクスペリエンスが実現しました。

この機会に、Windows RT における私たちのコラボレーションが、その他のあらゆる Windows リリースの場合といかに違っているかを説明させていただきます。Windows RT PC のエンジニアリングでは、PC 製造メーカー、シリコン チップ製造パートナー、通信事業者の密接な共同作業を通してハードウェア、ソフトウェア、サービスの一体化に取り組み、SoC の集積基板、Windows RT、ファームウェア、ドライバーの初期ビルド、PC ハードウェアの数百に及ぶリリース前サンプルなど、各パートナーそれぞれの製品開発における初期段階の成果を共有しました (開発初期に公開されたデモンストレーションやビデオは、これらを使って作成されています)。製品設計は周知され、力を合わせた開発/テスト作業によって洗練されていきました。その結果、高速で滑らかなタッチ操作、長時間のバッテリ寿命、接続維持スタンバイ、薄型で軽量の美しいデザインなど、Windows RT の機能を最大活用するために欠かせない特長が、すべての Windows RT PC に共通して実現されました。

リリース前に開発された Windows RT PC の実際のスナップショットです。開発最初期のエンジニアリング プロトタイプと最新版に進化したハードウェアの違いにご注目ください。

2 つのノート PC が並ぶ

これらの目標達成にあたって Windows から行ったサポートは、いくつかの主要シナリオを特定し、洗練させ、最適化することでした。複数の主要シナリオが連携することで、最新テクノロジとエンジニアリングの共同作業がなければ実現できなかった、新しいレベルのモバイル エクスペリエンスとパフォーマンスが可能になりました。ここからは、Windows RT の仕様のいくつかを詳しく紹介していきます。

接続維持スタンバイは、PC を "常時起動、常時接続" の状態にするシナリオです。ネットワーク接続を維持したままスタンバイ状態に入ることで、バッテリ消費を抑えながら、重要情報や最新情報を見逃さないようにします。未使用の状態が続いている Windows RT PC は新たに設計された低電力状態に切り替わるので、最新のデータを維持しながらも数日間はバッテリをチャージする必要がありません。再度使う場合は、ボタンをタッチすると 1 秒以内にシステムが起動します。つまり、フル機能の PC でありながらも携帯電話のようなエクスペリエンスが実現されています。さらに消費電力モデリングのシナリオをシステム全体で徹底的に強化することで、薄型で軽量のデザインを通して、丸 1 日使えるバッテリ残量、接続維持スタンバイで数日間使えるバッテリ残量をより正確に通知できるようになりました。

以下の表は、接続維持スタンバイのシナリオと消費電力のシナリオに対する、開発初期の Windows RT PC を使ったテストでの測定範囲です。

計測では、現在も最終調整が行われているファームウェアと、リリース直後の Windows RT RTM コードが使用されました。これにより、計測値に影響する要素は製造メーカーの取り組み部分だけとなります。この計測の意義をご理解いただくため、シナリオの計測方法を説明します。ここでは、計測対象の各 PC のローカルに保存されている HD ビデオを、最高解像度、画面の明るさ 200 ニット、全画面表示で再生しました。さらに Microsoft のネットワークで電子メール アカウントを 1 つ設定しました。また、計測値は PC ハードウェア自体の影響を受けています。ハードウェアには、タブレットとラップトップ、10.1 ~ 11.6 インチの画面サイズ、25 ~ 42 ワット時のバッテリ容量という違いがありました。

シナリオ

開発初期での計測範囲

HD ビデオ再生

8 ~ 13 時間 (シナリオ実行時)

接続維持スタンバイ

320 ~ 409 時間 (シナリオ実行時)

開発作業の中で消費電力モデリングの分析に部品レベルで取り組んだ結果、設計部分の調整が必要な領域の詳細が明らかにされていきました。たとえば、一般的なタッチ コントローラー ソリューションはマルチチップ ソリューションに基づいて設計されています。これをシングルチップに減らして消費電力と発熱を抑えることで、バッテリ サイズの縮小と、薄型で軽量のデザインが可能になりました。以下の表は、Microsoft パートナーによる ARM SoC 搭載のさまざまなハードウェアとモデルで実現された重量と薄さの概要を示しています。

   

システムの仕様

測定範囲

重量 (g)

520 ~ 1200 g

長さ (mm)

263 ~ 298 mm

幅 (mm)

168.5 ~ 204 mm

高さ (mm)

8.35 ~ 15.6 mm

消費電力が抑えられたことに加え、これらのシングルチップ ソリューションによってパフォーマンスが最適化されたことが、高速で滑らかなタッチ操作につながりました。一般提供時にパートナー各社が提供する Windows RT PC では、指 1 本あたり 100 Hz のサンプリング レートが実現される予定です。これは高速で滑らかな応答性はもちろん、業界最高レベルの精度を可能にする数値です。

グラフィック コアにも緻密な最適化が施されています。HD ビデオ再生の消費電力を効率化したことに加えて、Windows RT のコア UI のアニメーションは、設計目標として掲げた 60 fps を達成しました。

消費電力の抑制、薄型化、軽量化だけではありません。Windows RT PC で情報を直感的かつ簡単に共有するといった新しいシナリオの実現にも取り組んでいます。たとえば、一般提供時には NFC 対応の Windows RT PC も登場する予定です。これはタップによる共有などの楽しく興味深い操作に対応した PC で、NFC 対応の Windows RT PC が 2 台あれば、写真、URL、地図上の経路、その他ソフトウェア パートナーが自社の Windows アプリに組み込んだあらゆる項目を、2 台の PC での同時タップだけで簡単に共有できます。もちろん、USB 大容量ストレージ、印刷、オーディオ/ビデオ周辺機器といった各種のデバイス シナリオ、WWAN、Wi-Fi、Bluetooth、USB などの接続規格にはネイティブ対応します。これらを支える Windows 8 と Windows RT に共通の基盤は、既に //BUILD/ カンファレンスの時点で発表されたものです。

Windows RT はタブレット ハードウェア専用というわけではありません。販売予定の PC には、すべての操作をキーボードとタッチパッドで完結でき、さらにキーボード部分を取り外せるものと従来のノート型のものがあります。この仕様の場合、バッテリ容量が増えることに加えて、Windows 8 のジェスチャを取り入れた新しいタッチパッド エクスペリエンスが搭載されています。私たちはタッチパッド部品製造メーカーとの緊密な共同作業を通してファームウェアでのネイティブ サポートを実現しました。これによって驚くほど高速なジェスチャ認識機能を駆使して Windows をスムーズに操作できます。ネイティブ サポートされる予定のタッチ ジェスチャについては、以下の 2 つの表をご覧ください。

1 本指でスライド

1 本指/2 本指でタップ、ダブルタップ

2 本指でスライド

人差し指 1 本で操作。矢印はスライドの方向を示す

人差し指で操作。矢印はタップ ジェスチャの方向を示す 指 2 本で操作。矢印は左右または上下の動きを示す

マウス カーソルの操作

プライマリ/セカンダリ ボタンのクリック、カーソル位置のダブルクリック

左右または上下のスクロール (マウス ホイール)

 

2 本指でピンチ

右端からスワイプ

上端からスワイプ

左端からスワイプ

親指と人差指を使ってピンチ

人差し指を右から左にスライド 人差し指を上から下にスライド 人差し指を左から右にスライド

ズーム
(Ctrl + マウス ホイール)

チャームの切り替え
(Windows ロゴ キー + C)

アプリ コマンドの切り替え (Windows ロゴ キー + Z)

最後のアプリに切り替え (Windows ロゴ キー + Ctrl + Backspace)

最後に、ハードウェア部品や最適化の取り組みがすばらしいエクスペリエンスとして実を結ぶために欠かせない、これらのハードウェアと最適化を利用するアプリケーションについて説明します。Windows、PC 製造メーカー、シリコン製造パートナーのエコシステムは、新しい PC ハードウェアの機能を活かしたアプリケーション エクスペリエンスの実現に向けて、世界中の開発者と連携し、彼らをサポートしてきました。私たちはこうした目標に基づき、OS とアプリの開発/テスト用のハードウェア システム リファレンス デザインを数多く作成し、1500 件を超える Windows RT のリファレンス システムを ISV や IHV 企業に公開して、一般提供に向けた彼らの取り組みをサポートしています。その効果は明らかで、Windows ストアの RTM アプリケーションの 90% 以上が Windows RT をサポートすると共に、プリンター、Web カメラ、モバイル ブロードバンド モジュールなどの各種周辺機器との互換性を保証する Windows ハードウェア認定の要件にも対応しています。

Windows RT は、Windows にとどまらず、Windows PC、そしてエンジニアリングに対するエコシステム全体のかかわり方をも大きく刷新する存在となりました。Windows RT を中心に、シリコン製造メーカー、部品製造メーカー、PC 製造パートナー、そして Windows エンジニアリング チームによる緊密な共同作業が実現したのです。その結果、高速で滑らか、常時起動と常時接続、薄型で軽量、丸 1 日使えるバッテリ寿命といったメリットをお約束できる、魅力的で強力な、新しい Windows PC スイートが誕生しました。今後は、Dell、Lenovo、Samsung の各社による発表を楽しみにチェックしていきましょう。

--Mike