Windows 8 は、世界中で実にさまざまな方に使っていただけるように設計されている製品です。個人の身体能力に関係なく、だれもが Windows 8 を使うことができるようにすることは、私たちがより高いレベルのイノベーションを実現するために取り組んできたことの 1 つです。中でも、新しい Metro スタイルのエクスペリエンスを万人が使用できるようにしたいと考えています。今回の記事では、"アクセシビリティ" (ユーザー補助) と呼ばれる機能に組み込まれるエンジニアリング技術についてお話しします。これからご説明するように、これらの機能の多くは応用範囲が広く、障碍を持つ方だけでなく、どなたにとっても使いやすい製品を実現するために役立つものです。Microsoft のアクセシビリティ関連の全体的な取り組みについては、http://www.microsoft.com/japan/enable/ を参照してください。この記事は、Windows Store で公開する Metro スタイル アプリを作成する開発者にとって特に重要です。Windows Store への提出前に、アプリケーションのアクセシビリティをテストしていただくようお願いしているためです。アクセシビリティ ツールの実際の動作をご覧になったことがない場合は、ぜひ記事内にあるビデオでご確認ください。近日公開されるベータ版は、皆さんに Windows 8 を体験していただく格好の機会となると思います。

次のベータ リリース (今月中) では、この記事で説明する機能が大幅に強化されています。ただし、ベータ版から RC 版までの間には、特にサード パーティ製ツールの最新リリースとの連携に関して、まだ必要な作業が残されていることを十分にご理解ください。この記事では、次のリリースでの機能強化のほか、製品候補 (RC) 版のリリースまでにさらに改良が重ねられる機能についても取り上げていることにご注意ください。

この記事は、HID チームのシニア プログラム マネージャー リードである Jennifer Norberg が執筆しました。

-- Steven


私たちは、すべてのユーザーが、デスクトップ PC やノート PC、新しいタッチ対応デバイスで、Windows 8 Metro スタイル アプリを利用できるようにしたいと考えています。これには、PC を使用するうえで支援技術を必要とされる障碍 (しょうがい) のある方も含まれます。

世界の人口の約 15% の方に、なんらかの障碍があります1。米国だけでも 4,960 万人の方に障碍があり2、ヨーロッパでは 4,500 万人に上ります3。障碍別に見ると、コンピューターを操作するうえでは、次のような影響があります。

  • 視覚障碍: 弱視、色盲、全盲などの症状があります。いずれの症状も、画面に表示される内容の読み取りに支障をきたすことがあります。
  • 運動障碍: 関節炎、脳性麻痺、パーキンソン病、多発性硬化症、対麻痺などがあり、キーボードやマウスを使用した PC 操作に支障をきたします。
  • 聴覚障碍: 少し聞こえにくい状態からまったく聞こえない状態まであり、コンピューターから出されるオーディオ コンテンツの利用に支障をきたします。
  • 認知機能障碍: 学習スキルや言語スキル、言葉を認識する能力に影響し、記憶、問題解決、または感覚情報の知覚に支障をきたします。

障碍がある方の割合も、高齢化や慢性疾患の増加に伴い、世界的に増えています。世界的な高齢化の影響の 1 つは、労働人口への影響です。たとえば、米国では 55 歳以上の労働者の割合は、2018 年までに 18.1% から 23.9% に増加すると予想されています5。これは、労働者 5 人に 1 人以上の割合です。加齢による機能的制限 (たとえば老視が挙げられます。老視は、近くのものに焦点を合わせる目の機能が徐々に衰える状態を指し、通常は 40 代半ばから自覚され始め、65 歳ぐらいまで症状が進行します) が原因で、高齢な労働者は、読み取りにくいテクノロジを利用することが難しくなります。このため、労働年齢の成人の中で、アクセシビリティ テクノロジの使用が有効になると思われる労働者は今後増えるでしょう。

新しいテクノロジが一般に最初に公開される時点では、アクセシビリティ対応になっていない場合が多いため、特に障碍がある方にとっては、新しいテクノロジやデザインの受け入れは困難です。私たちは、Windows のこれまでのバージョンについてこの問題の報告を受けてきました。そこで Windows 8 では、デスクトップ機能と Metro スタイル機能に対応する包括的なアクセシビリティ プラットフォームを提供し、だれでもすぐに Windows 8 を体験できるようにしたいと考えています。

Windows 8 でのアクセシビリティ関連の目標は、次のとおりです。

  1. Windows のコンポーネントである支援技術を強化し、Metro スタイル UI を快適に利用できるようにする。
  2. 基本要件を満たすアクセシビリティ機能が組み込まれた開発者ツールを提供することで、アクセシビリティ対応の Metro スタイル アプリが Store で提供されるようにする。
  3. 支援技術ベンダー (ATV) による Windows 8 への対応と Windows 8 のアクセシビリティ シナリオに基づく開発を後押しする。

このブログでは、上記の各目標と対象ユーザーについて説明します。

アクセシビリティに関するこれまでの取り組み

先へ進む前に、これまでの Windows のアクセシビリティ機能を振り返ってみましょう。過去のリリースでは、UI オートメーション (UIA) という基盤技術を確立しました。開発者は、UIA を使用してコードについての情報を提供します。UIA は、支援技術 (AT) が開発者のアプリケーションの情報にアクセスし、利用するためのしくみです。

AT は、次のような Windows のコンポーネントとしても提供されています。

  • ナレーター: Windows に組み込まれているスクリーン リーダーで、視覚に障碍のある方がシステムやアプリケーションを操作できるようにします。ナレーターのこれまでのバージョンに対するユーザー フィードバックでは、常に、応答速度の改善、読み取り可能なコントロールの拡充、サポート言語の拡張が求められてきました。
  • 拡大鏡: 低視力の方が読み取ることができるようにテキストやグラフィックを拡大する Windows のツールです。拡大鏡が最初にリリースされたのは Windows 98 で、Windows 7 では大々的に更新され、全画面を拡大できるようになりました。この変更については、好意的なフィードバックが寄せられています。ただし、ハイ コントラスト配色の設定と競合することがあり、拡大鏡にはまだ課題が残されています。
  • 音声認識: Windows Vista で登場した機能で、運動障碍のある方の PC の操作や使用を支援します。この機能は本当に好評で、音声認識の精度が高く、発話がテキストにすばやく変換され、一般的でない一部の語も処理できるというフィードバックをいただいています。
  • スクリーン キーボード: 運動障碍がある方のために Windows XP 以来提供されています。

これらの Windows 付属の AT は障碍に幅広く対応しますが、さまざまな種類の障碍をカバーするために、Windows では充実した AT ベンダー エコシステムの協力を仰いでいます。また、このエコシステムにおけるイノベーションを全面的にサポートしています。これは Windows 8 でも変わりません。Microsoft は、Windows コンポーネントとして提供する AT の機能強化に努め、Metro スタイル UI のような新しいシナリオのサポートを実現しながら、AT ベンダーが成功できる充実したプラットフォームとエコシステムを引き続き提供していきます。

Windows 8 でのアクセシビリティ機能の強化

私たちは新しいリリースのたびに、ユーザー フィードバックを収集し、いただいたフィードバックに対応しています。より充実した AT 機能の搭載が Windows 8 に求められているのは明らかです。このフィードバックにお応えするため、Windows 8 では次の領域に投資をしました。

  • ナレーターの設計を見直してパフォーマンスを改善し、選択した内容がすばやく読み上げられるようにしました。
  • さらに多くの国/地域と好みに対応できるように、ナレーターの言語と声を追加しました。
  • ナレーターによる読み取りを可能にする UI オートメーションを利用できるように、Windows のコンポーネントと機能を更新しました。
  • UI オートメーション (UIA) のテキスト パターンとドキュメント コンテンツを拡充し、ナレーターが UIA を使用してアプリケーションの出力を読み取りできるようにしました。

上記の機能強化を重点的に実施したのは、次の 2 つの重要なシナリオに対応するためです。

  1. PC のインストール、セットアップ、および構成: 現行の Windows 7 PC で、コンピューターの簡単操作を開いてナレーターを選択し、ナレーターを有効にしてみてください。その後、Windows 8 をダウンロードおよびインストールできる Web ページ (Windows 8 Developer Preview のダウンロード ページ (英語)) にアクセスすると、ナレーターの読み上げに従ってセットアップを進めることができます。このプロセスにはまだいくつかバグがあり、現在、解決に取り組んでいます。それでも、ナレーターを使用したインストール機能をご利用いただけるようになっています。

    Windows 8 では、ナレーターの新しい構成オプションがいくつか導入され、声の選択、読み上げ速度の変更、カスタマイズ可能なコマンドの作成、ナレーターのその他の動作の調整ができます。

    ナレーターでサポートされるすべてのタッチ ジェスチャを確認するには、3 本の指で 2 回タップします。1 本の指で画面上をドラッグすると、タッチしているアイテムの名前を聞くことができます。すべてのナレーター コマンドを確認するには、キーボードで Windows + Alt + F1 キーを押します。[全般]。ナレーターの起動方法と他の標準設定を変更します。[ナビゲーション]。ナレーターを使用してシステムを操作する方法を変更します。[音声]。現在の音声のスピード、高さ、または音量を変更するか、新しい音声を選択します。[コマンド]。カスタマイズ可能なキーボード コマンドを作成します。
    ナレーターの設定を構成するメイン画面

    新しい Windows 8 タブレットは、梱包から取り出して Windows ロゴ キーと音量アップ ボタンを押すだけでナレーターが起動し、マシンのセットアップ手順をご案内します。全盲の方も、弱視の方も、健常者の方も、手に入れた瞬間から Windows 8 タブレットを使い始めることができます。

  2. Web ブラウズ: これまでのナレーターでは、読み上げできる Web ページの内容は少なく、速度も遅いものでした。しかし、UI オートメーション プラットフォームに組み込まれたテキスト パターンを活用するように Internet Explorer が更新され、パフォーマンスもさらに強化されたことで、Web ページ上のテキストを閲覧しながら、スムーズにナレーターを利用できるようになりました。ナレーターは、ページを連続的に読み進めることを可能にし (読み上げを有効にするには、Windows ロゴ キー、Alt キー、\ キーを同時に押します)、各コマンドにすばやく反応します。たとえば、Ctrl キーを押すと読み上げが直ちに停止されます。これにより、ハイパーリンクなどのコントロールを操作できます (Windows ロゴ キーと Alt キーと Enter キーを同時に押すとハイパーリンクが選択され、Windows ロゴ キーと Alt キーと Space キーを同時に押すと、リンク先のページに移動します)。

ユーザー フィードバックに応えるだけでなく、Metro スタイル アプリをアクセシビリティに対応させるためにも、大がかりな取り組みが行われています。

開発者のためのアクセシビリティ プラットフォームの進化

機能の開発と並行して Windows をアクセシビリティ対応を実現していくことは困難ですが、まったく新しい開発プラットフォームを導入しながらそれを行うのはさらに困難です。それでも私たちは、障碍のある方が Metro スタイルのエクスペリエンスをすぐに楽しめるようにしたいと考えました (ここが Win32 プラットフォームとは違います。Win32 がアクセシビリティ対応になるまでには、長い年月といくつものリリースを経る必要がありました)。

手始めに、アクセシビリティの基盤を更新し、業界標準をサポートしました。Web Accessibility Initiative (WAI)、Accessible Rich Internet Applications (ARIA)、HTML5、XAML の標準をサポートすることで、開発者がアプリケーションにアクセシビリティ機能を実装しやすくなります。UI オートメーションを使う AT でも、Windows 8 でアクセシビリティ シナリオを実現するために必要な情報を簡単に利用できるようになります。

これに対して以前のリリースでは、システムの情報を処理してユーザーに提供するために、システムから情報を取得する方法を AT ベンダーが "工夫" する必要がありました。充実したエクスペリエンスをユーザーに提供するにはさまざまな方法が考えられますが、標準に準拠していない方法は、新しいリリースに合わせて変更する必要が生じた場合に問題にもなります。このため、(開発者が準拠する) 既存のコーディング標準にのっとり、リリース間で一貫性を保つことができる堅実な基盤をプラットフォーム内に作成することが求められていました。そうすれば、このプラットフォームを利用する AT 開発者はアクセシビリティ情報を確実に取得でき、特別なトリックやコーディングは不要になります。

ユーザーから二重矢じり付き矢印が伸び、支援技術 (スクリーン リーダー、拡大鏡など) に続き、さらに二重矢じり付き矢印がプラットフォームのアクセシビリティ API (UI オートメーション) に続く。ここから矢印が 2 セットに分かれ、1 つは Metro スタイル アプリに、もう 1 つはデスクトップ アプリケーションに伸びる。開発者、プラットフォーム、およびユーザーへの情報提供に必要な AT の相関図

一貫したプラットフォームにより、Windows の Metro スタイルの機能の開発者は、標準とプラットフォームを利用してコンポーネントを確実にアクセシビリティに対応させることができるようになりました。Windows 8 では機能の設計、開発、テストと並行して、継続的にアクセシビリティ対応を進めています。Windows 8 Developer Preview のビルドをリリースした時点で、Windows チームはアクセシビリティにも取り組んでいました。しかし、ハイ コントラスト、キーボード操作、AT が利用するプログラムのデータに関してバグが残っていました。まだまだ取り組みは完成してはいませんが、目標を達成できるよう、引き続き全チームを挙げてアクセシビリティ要件の実現に取り組んでいきます。Windows 8 の一般リリースのたびに、アクセシビリティ関連の機能は強化されていきます。

Metro スタイル UI は Windows の新しいエクスペリエンスで、これにより、アクセシビリティ設定を新しい方法で提供する機会が生まれました。私たちは、この機会を活かして、障碍のある方がエクスペリエンスを管理するための主要な設定を簡素化し、最適化することができました。

たとえば、ハイ コントラストの設定を切り替えるための新しい方法を導入しました。これは、見つけやすく、適用しやすい方法です。また、UI 要素のサイズを調整して大きくするのも簡単になったほか、DPI スケール設定は自動的に調整され、手動で管理する必要がなくなりました。これらの設定を簡素化することは、多くのユーザーのお役に立つと考えています。

アクセシビリティ対応アプリを作成および販売する開発者

Metro スタイル アプリは、アクセシビリティの基本要件 (英語) を満たすアプリを作成および販売して、アクセシビリティ エコシステムを活性化できる絶好のチャンスになります。

さいわい、アプリをアクセシビリティ対応にするために新しいテクノロジを学習する必要はありません。Windows では、既存の標準を利用して、アクセシビリティ対応アプリの開発に必要な学習を軽減しています。HTML アプリは、ARIA (英語) (アクセシビリティ情報を宣言するためのマークアップ スキーマ) を含む、HTML5 標準を利用します。同様に XAML アプリでは、Silverlight や Windows Presentation Foundation (WPF) と同様のプラットフォームによって使用される、よく知られたマークアップ スキーマを使用します。また、Windows 8 向けの開発プラットフォームとツールは、開発プロセスのすべての段階でアクセシビリティ対応アプリの開発をサポートしています。

  • 作成: Visual Studio Express のプロジェクト テンプレート (英語) の 1 つを使用してプロジェクトを作成すると、アクセシビリティに対応できるコードが作成されます。つまり、すぐにスクリーン リーダー (ナレーター) を使用でき、キーボードも完全に使用でき、ハイ コントラスト モードでも問題なく機能し、テキストのコントラストや配色を工夫して視覚的なアクセシビリティを確保できるコードになります。これは、アクセシビリティ対応アプリを構築する土台として、非常に便利です。
  • コーディング: アプリのコーディング段階では、開発プラットフォームとツールが提供する次のような支援機能を利用できます。
    • Visual Studio Express IntelliSense を使用すると、マークアップ内ですばやくアクセシビリティ属性 (英語) を入力し、アクセシビリティ情報を宣言できます。
    • アクセシビリティのサポートは、Windows 8 コントロールに組み込まれています。通常、必要な作業は、アクセス可能な名前 (英語) を適切に定義することだけです。
    • Dev Center のガイドライン (英語) とサンプル (英語) を使用して、ベスト プラクティスを学習したり、アクセシビリティ対応コードをコピーして貼り付けたりできます。

ここで疑問として浮かぶのは、インタラクティブなゲームや HTML5 キャンバス ベースのアプリの場合、これらの機能がどのように役立つのかということでしょう。ご推察のとおり、ツールやテンプレートを利用するだけではアクセシビリティを実装できない種類のアプリがあります。このようなケースに対応するため、引き続き開発者コミュニティとの連携に努め、カスタム ソリューションを公開し、アクセシビリティ ガイドラインを拡充してさらにサンプルを提供していく予定です。

  • テスト: アプリがテストできる段階になったら、Windows SDK アクセシビリティ テスト ツールを使用して、マークアップを検証します。Dev Center には、Metro スタイル アプリのアクセシビリティのテスト (英語) についてのガイドラインも用意されています。
  • 販売: アプリが完成し、基本のアクセシビリティ シナリオ要件を満たしている場合、Windows Store への公開時に [アクセシビリティ] チェック ボックスをオンにして、そのアプリがアクセシビリティ対応であることを宣言できます。これにより、アクセシビリティ対応アプリを探しているユーザーが、該当するアプリを Store で簡単に見つけることができます。

Windows 8 向けのアプリケーションを開発する場合、開発したアプリがアクセシビリティ コミュニティに受け入れられるようにするには、上記のプロセスに従って、次の要件を満たす必要があります。

  • 標準をサポートする。弱視または全盲の方が、ナレーターなどのスクリーン リーダーを使用できるようにし、アプリが提供する基本シナリオを実行できるようにしてください。スクリーン リーダーは、前述の UIA と標準を利用して、アプリから情報を取得します。
  • キーボード ショートカットを用意する。運動障碍のある方や、キーボード操作を好むスクリーン リーダーのユーザーが、キーボードそ使用して、アプリやその UI 要素を操作できるようにしてください。これには、Tab キーや方向キーを使用した操作、Space キーや Enter キーによるアクティブ化、ショートカット (アクセス キーやアクセラレータ) の使用が含まれます。
  • ハイ コントラストおよびこのモードでの "拡大" をサポートする。テキストのコントラストを強調し、適切なハイ コントラスト モードを使用することで、低視力の方が UI とテキストを区別できるようにしてください。また、[画面上のすべてのものを大きくする] モードを有効にしたときに、レイアウト設定が崩れないようにしてください。

詳細については、アクセシビリティ対応の Metro スタイル アプリの作成 (英語) についての //build でのプレゼンテーションを参照し、ご自分のアプリの作成に着手してください。

アクセシビリティ対応の Windows 8 アプリの検索

Windows Store では、アクセシビリティ フィルターを設定することで、開発者によってアクセシビリティ対応であると宣言されているアプリを検索できます。また、ユーザーがコメントや評価を提供できるため、ユーザーどうしはこれらの情報を参考にアクセシビリティの高いアプリを探したり、開発者は開発したアプリのアクセシビリティ対応がどの程度であるかを把握したりできます。

新しいフォーム ファクターへのアクセシビリティ機能の適用

Windows 8 での最も刺激的な変化の 1 つは、Windows ファミリーにタッチ操作専用のデバイスが加わったことです。また、Windows がサポートするフォーム ファクターの例に漏れず、これらの新しいタッチ操作専用デバイスもアクセシビリティ対応にしたいと考えています。その結果、かなりの時間をかけて、Windows AT をタッチ操作専用デバイスで利用できるようにするための計画を練りました。これは、主に拡大鏡機能とナレーター機能を移植することで実現します。

タッチ操作による画面の拡大とナビゲーション

拡大鏡の使い方はいくつかありますが、最も一般的な方法の 1 つはキーボード ショートカット (Windows ロゴ キー + プラス記号 (+) またはマイナス記号 (-)) を使用することです。ただし、タッチ操作専用デバイスには、ショートカットを入力できるキーボードがないため、このようなシナリオで拡大鏡をスムーズに利用できるようにする方法を考える必要がありました。簡単で、すばやく、邪魔にならないタッチベースのソリューションを開発したいと考えました。拡大鏡をお使いになったことがある方は、Windows 7 に用意されている複数のモードをご覧になったかもしれません。カスタマー エクスペリエンス向上プログラムによって収集されたデータによると、全画面表示モードが最もよく使用されていたため、このモードをタッチ操作向けソリューションの基盤にすることにしました。また、全画面表示モードは、スクリーン全体が使われるため、タッチ ジェスチャを利用するにも最適です。

タッチ操作を使用する最大のメリットの 1 つは、画面上のすべての要素を直接操作できる点です。マウスやキーボードなど、別のデバイスは必要ありません。目的の要素をタッチするだけです。拡大鏡をお使いのユーザーから報告を受けたデメリットとしては、タッチしながらでは画面が見にくいということでした。手が画面上に置かれているため、手の下にあるものを見ることができないのです。しかし、拡大鏡の眼目は、ユーザーが画面を見ることができるように支援することで、画面を隠すことではありません。したがって、画面の端だけで拡大鏡を制御できるようにすることを、タッチ対応デバイスの設計原則の 1 つとしました。

タッチ対応デバイスで拡大鏡を起動すると ([簡単操作] パネルで、Windows ロゴ キーを押しながら音量アップ ボタンを押すと拡大鏡が起動するように設定します)、すぐに画面の端に沿ってフレームが表示されます。画面の全領域にアクセスする必要があるので、このフレームを使用して画面内で拡大鏡を簡単に移動できるようにしました。指をフレームに沿ってドラッグすると、ドラッグした方向に拡大鏡を移動できます。画面の端に到達すると、フレームは非表示になります。

2 つの画像: 左の画像は、[スタート] 画面の拡大図で、4 辺に沿ってフレームが表示され、左上隅と右上隅にはプラス記号が、左下隅と右下隅にはマイナス記号が表示されている。下端に表示されている青い円は、ドラッグしている指を表す。2 つ目の画像は、同じコントロールが表示された同じ [スタート] 画面の別の部分で、スクロールした状態を示している。

指をフレームに沿ってドラッグして、拡大鏡を移動できます。画面の端に到達すると、フレームは非表示になります。

四隅にあるプラス (+) ボタンとマイナス (-) ボタンを使うと、拡大と縮小を行うことができます。また、同じフレームを使用するマルチタッチによるズーム機能も組み込みました。フレーム上で 2 本の指を近づけたり離したりすることで、ズームのレベルをすばやく変更できます。

拡大している場合、画面上のどの部分を見ているかがわからなくなることがあります。この問題を解決するため、拡大鏡にはプレビュー機能が用意されています。プレビューを使うと、画面全体のどの部分を表示しているかを正確に把握できます。プレビュー機能を有効にするには、向かい合うフレームを同時に指でタップします。プレビュー機能によってズームアウトされ、画面のどの部分を表示しているかが示され、その後、再び現在の場所が拡大表示されます。

現在、拡大鏡の焦点が画面のどの領域に置かれているかを示す、ハイライトされた小さな四角形が表示された [スタート] 画面

向かい合うフレームを同時にタップすると、全画面のプレビュー機能によって、画面上の位置が示されます。

ズームアウトした状態で、ハイライトされた領域をドラッグして、拡大鏡の画面内の位置を移動することもできます。

拡大鏡で最も重要なことは、タッチ操作で拡大鏡を使用するために、デバイスの操作方法を変える必要がないことです。拡大鏡は、いったん有効にすればどのアプリでも使用できます。デバイスの画面が見にくい弱視の方にとっては、拡大鏡によって画面が見やすくなるだけでなく、タッチ操作もしやすくなります。

ナレーターによる UI の探索と確認

Windows 8 では、ナレーターは再設計され、格段に高速になり、多くの新機能をサポートするようになりました。ナレーターをタッチ専用デバイスでサポートするために、ナレーターを起動する標準の方法を実装しました。Windows ロゴ キーを押しながら、音量アップ ボタンを押すことです。ナレーターが実行中になったら、ナレーターの組み込みのタッチ コマンドを使用して画面を探索し、デバイスを制御できます。

全盲の方の場合、タッチ操作で問題になるのは、画面上にある要素は有効化されないと見つける手立てがないということです。Windows 8 搭載デバイスでは、ナレーター使用時に画面上を 1 本指でドラッグできるようにすることで、この問題を解決しています。ナレーターは指の下にある要素を読み上げますが、有効化はしません。視力のある方は、ナレーターのカーソルが指に合わせて動くのも確認できるでしょう。私たちは、これを "探索" と呼んでいます。これは、画面の上にガラスの板が 1 枚重なっていると想像していただくとわかりやすいでしょう。ナレーターを起動すると、画面には直接タッチせずにこのガラス板をタッチして、その下にある要素を探索できるようになります。1 本指で探索して目的のアイテムを見つけたら、2 本目の指でどこでも任意の場所をタップすると、そのアイテムを有効化できます。


ビデオをダウンロードしてお好みのメディア プレーヤーで再生することができます:
高画質 MP4 | 低画質 MP4

これらは、Windows 8 に付属する、タッチ専用デバイス向けに最適化された AT のうちの 2 例にすぎません。Windows 8 のすべての AT で他にもさまざまな機能強化が行われていますが、これについては、また後日お話ししたいと思います。

支援技術ベンダーとの連携

対応すべきシナリオも多数あり、障碍の範囲も多岐にわたっているので、マイクロソフトでは AT ベンダーと協力関係を結び、障碍者コミュニティにとって最も有効で包括的なエクスペリエンスを開発できるように取り組んでいます。Windows 8 に付属する支援技術は、デスクトップ エクスペリエンスと Metro スタイル UI エクスペリエンスの両方で使用でき、PC へのシームレスなアクセスを実現します。高度な AT 機能を必要とされる方は、専門の支援技術ベンダー (AT ベンダー) から、各自のニーズに合ったソリューションを購入する必要があるかもしれません。

AT ベンダーは、障碍者にとってより充実したエクスペリエンスを提供できる、高機能の AT を開発しています。たとえば、そのような AT では、特定のアプリケーションや古いアプリケーションを詳細にサポートしています。Windows に付属する AT は、UIA を実装していないレガシ アプリケーションなど、業界標準やプラットフォーム テクノロジをサポートしていないアプリでは、思うように機能しない可能性があります。

Windows 8 では、新しい Metro スタイル UI の基礎を築くことと、アプリケーション ベンダー、AT、および障碍者コミュニティにとって役立つ業界標準を採用することに、かなり力を注ぎました。

必要な情報を取得する標準の方法を提供することで、アプリの開発者にとってなじみのある標準を AT でも扱うことができます。しかし、それ以上に重要なのは、AT ベンダーがこれらの標準に準拠すれば、開発した AT は複数の Windows リリースでサポートされ、リリースが変わるたびに不具合が起きることはないという点です。//Build カンファレンス以来、大手の AT ベンダーと協力体制を築き、Windows 8 への対応を支援しています。これには、以前使用されていたミラー ドライバー (英語) のサポートと UIA サポートが含まれています。

今後も AT ベンダーと連携して、AT ベンダーが抱える疑問が解消されるようにし、Windows 8 でのアクセシビリティの確保という共通の目標に向かって協力していきます。

Windows 8 は、私たちが Windows のアクセシビリティ サポートを強化できる格好の機会になっています。プラットフォームが進化しただけでなく、開発者の方にとって、各社の障碍者向けアプリケーションの利用者を増やす新たな機会も生み出されています。また、Windows 8 に付属する AT にもこだわり、パフォーマンスや言語サポートを強化しただけでなく、タッチ専用デバイスを含む新しいフォーム ファクターへの対応も果たしました。今後も、革新的で充実したサードパーティのエコシステムへの協力を惜しまず、さらに標準化した一貫性のあるインターフェイスを用意することで、Windows を基盤としたイノベーションを次々と生み出すお手伝いをしたいと思います。

アクセシビリティ機能を必要とされる方には、私たちの成果を気に入っていただけると思います。開発者の方は、ぜひアクセシビリティ対応アプリを開発し、対象ユーザーの範囲を拡大してください。AT ベンダーの方は、ぜひご協力いただき、Microsoft のプラットフォームを使用して、アプリケーションを更新してください。Windows 8 は、健常者も障碍者も含めあらゆる人にとって、PC 操作のあり方を変える非常に魅力的で楽しみなリリースです。

すべてのアクセシビリティのニーズを満たすには、まだ Windows に手を加える必要はありますが、ぜひ、無料の新しい Windows 8 AT を使って Metro スタイルのエクスペリエンスをお試しください。

-- ヒューマン インタラクション プラットフォーム チーム、リード PM、Jennifer Norberg

データ

  1. WHO: 障碍と医療: 概況報告書 No. 352 (英語)
  2. 米国勢調査: 米国の概況: 数字で見るアメリカ (英語)
  3. 欧州での AT についての報告書: 欧州の支援技術 ICT 業界の分析および連合、2009 年 3 月 (PDF) (英語)
  4. Lifekludger: タッチ操作の壁 - タッチ テクノロジに関連するアクセシビリティとユーザビリティの問題 (英語)
  5. 職業案内ハンドブック、2010 ~ 2011 年版 (英語)