ビデオブログ向けビデオ制作というもの

Channel 9日本版サポートブログに書いた方がいいのかもしれませんが、ちょっと視点を変えて考えるためにこちらに書きます。

ビデオブログという新しいメディアは、その運営を継続するにはかなり努力が必要ではないかと感じるようになってきました。文字を主体とするブログは、思いついたら書くことができますが、動画を主体とするブログは、思いついたら撮影すればいいってものでもなさそうだからです。また、配信するビデオについてもいろいろと考慮する必要があるかと思います。

ビデオブロガーになろうとデジタルビデオの制作をはじめて何度か試行錯誤を繰り返していると、ことは単純ではないことがわかってきます。いくつかの理由が挙げられます。

・投稿するビデオには何らかのテーマが必要である
 文字に変わって動画で物事を伝えていくために、あるテーマのもと、会話なり場面がつながっていかないと困る

・著作権保護や肖像権保護を念頭におく必要がある
 個人的用途のビデオと異なり、簡単に音楽の挿入はできないし、プライバシーを守り、出演許可を得てない人の映像が放映されることを避けなければならない

・ネットワークを利用して配信するために帯域幅を無視できない
 たとえハイビジョンで撮影したとしても、ある程度の解像度に下げる必要があるし、いろんな回線でネットワークを利用している視聴者のことを考えなければならない

・1テイクで全ての場面が撮影できるわけではない
 編集せずに撮影したビデオを垂れ流しにすることはほとんど考えられない

・映像や音声がクリアでないビデオは見ているのがつらい
 照明条件、ビデオの明るさ、音響というものを無視できない

ここで注意してほしいのは、単なる動画共有とビデオブログは分けて考えたほうがいいということです。思いつくまま興味深い動画を共有する場合はストーリーとか品質とかあまり関係なく、単に面白ければよい、という可能性もあるからです。ビデオブログは文字に変わる記録ですから、投稿される動画には投稿者が意図している何らかの意味を伝達することが必要だと思います。

デジタル技術によって、ビデオの編集はリニア編集からノンリニア編集になって、ビデオの制作は素材を好きなように組み合わせることが簡単になっています。たとえばインタビューの記録内容を、撮影後の編集作業で順番を入れ替えることもできますし、必要でない部分を削除することも容易です。しかし、いざ編集を始めると、素材そのものの品質や全体のストーリーは無視できなくなってきます。また編集における加工もきりがなく、編集者がどこかで作業の終結を認めないといけません。

何にしても素材の集め方はかなり重要です。
解像度を下げて配信することを前提に考えると、解像度が高くないと理解できない映像を撮影することは避けなければなりません。たとえば、ソフトウェアのデモンストレーションをビデオに撮影することを考えれば、文字の大きさを調整できるなら大き目のものに変更する、調整ができないならズームを使って撮影する、といったことを念頭において向き合う必要があります。またコンピュータのディスプレイやプロジェクターから投影された画像を撮影する際は、ホワイトバランスのことを考えてカメラの調整をしなければなりません。屋内のホワイトバランスでコンピュータの画面を撮影するとどうしても青みが強い映像になってしまいます。よくテレビコマーシャルなどでディスプレイ部分の映像について「はめ込み合成」と書かれていますが、これは、ビデオカメラでテレビやコンピュータのディスプレイを撮影した場合にディスプレイの内側と外側の色を同時に再現することができないからです。たとえば、動画なり静止画を利用したプレゼンテーションを行っている様子をプレゼンター含めビデオカメラで撮影しようとすれば、色再現性を無視すれば別ですが撮影内容の色再現性を考慮すると安価な民生用のビデオカメラではまず太刀打ちできません。
また普通に人物を撮影するにしても、屋内での撮影の場合、単純ではありません。たいていの場合、屋内の撮影は照明条件が悪いことが多いからです。悪い照明条件をよくするためには、撮影環境に照明機材を持ち込んで条件を変えてしまうことが求められます。

映像だけでなく音声もいろんな課題が出てきます。
音声の収録を含めて撮影用の空間がきちんと確保できるということはまず考えづらいです。
たとえば、講演会場などでのプレゼンの様子をビデオに収めようとした場合、いかに音声をクリアに記録するかというのは、単純な問題ではありません。プレゼンターのマイク用の音響装置がきちんと用意されていて、そこから音声のラインが引き込めれば問題なく録音ができると思いますが、そうでない場合は周辺の雑音を拾うことを避けられません。マイクの指向性の高さやS/N比も重要になってきます。
また会話の収録などしゃべっている人が複数に分かれる場合、マイクをうまく使う必要が出てきます。

いろいろ書いていますが、上を見たらきりがないので、最後には適度なところでまとめる、ということも考慮する必要があります。

気軽に動画が撮影できる時代なので、個人としてビデオ日記にチャレンジするのは難しくないですが、企業としてビデオブログに向かうときは手軽さだけで進まない方がよいかもしれません。

Channel 9日本版は、そんなわけで今でも試験放送中。